旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

Uberはアメリカの全国的「白タク」システム

今アメリカ社会にはUberという一種のタクシー配車システムが導入され人気となっている。スマホでアプリをダウンロードして、指示に従って操作すれば簡単に車を呼べる。まず自分のいる場所がスマホ画面の地図に出る。次に「目的地はどこか」と表示されるので、スペルを入力すると候補が出てくるので目的地を決定。そして安い料金の安いuberXと高いuberLXの値段が表示されるので、どちらかをタップ。乗る前に料金が決められるので、乗ってから高額の料金を吹っ掛けられることがないので安心だ(チップは降りた時に15%にするか20%にするか選んでタップすればいい)。料金はUberアプリに登録した私のクレジットカードから引かれる。

そして車を呼ぶことを確定すると、GPSが近くにいるUberの車を探して、私が今いる地点に向かわせるという仕組みだ。地図には今その車がどこを走っているのか、あと何分で着くかという待ち時間も表示される。

私は明日、ダウンタウンRosa Parks transit stationというバスステーションからオーランド行きのバスに乗る予定。その時に迷ってしまうとバスに乗れないので、今日はその予行演習で、実際にUberを使って行ってみることにする。その場所を確認した後、ダウンタウンでお昼を食べて、カフェでお茶を飲みながら本でも読んで帰ることにする。

このUberだが、実はタクシー会社が運営しているものではない。誰でも一般の人がスマホで登録すれば運転手になれる。誤解を恐れずに日本の事情に当てはめてみれば、「アメリカの全国的な白タクの配車システム」だ。日本ではバスやタクシー以外の車が料金を取って人を乗せることはできない。営業車のナンバーは緑色だが、一般車は白い。その白いナンバーの車で人を乗せてお金を取る行為は「白タク行為」と呼ばれ、法律で固く禁じられているのだ。

だがアメリカは「自由の国」。法律を侵さない限りいろいろなアイデアを考えて、誰でもが新たな仕事を創り出すことができる。アメリカでは最近、失業率が低くなっているというが、誰でも自由に簡単に参入できるこんな仕事があってのことではないかと思う。

家の前にやってきたのは黒人の女性ドライバー。「初めてUberを使うのですごく緊張しているんです」とちょっと大げさなジョークを言うと、No ploblem! Take it easy.と笑う。バスステーションまで30分。楽しい会話が弾む。「Rosa Parksというバスステーションはジャクソンビル(何十キロか北の大都市)にもあって、間違えてそこを目的地に選びそうになりました。130ドルもしたので何かおかしいと思って、タップするのをやめました」と言うと、「へえー、ジャクソンビルにもあるの?」と驚いていた。

Rosa Parksという人知ってますか?」と彼女が聞く。「あのRosa Parks Incident(ローザ・パークス事件)の?」と応えると、「そうよ、このバスステーションも彼女の名前にちなんでつけられたの」と言う。

昔のアメリカ南部ではsegregationという「人種隔離」政策が行われていて、トイレや水飲み場もWhite(白人)とColored(有色人種)に分かれていた。バスも例外ではなく前の方が白人の席、後ろの方が黒人の席だった。だが、それはははっきりと線引きされているものではなく、前の方でも白人がいない場合には黒人も座ることができた。ローザ・パークスという黒人女性が前の方に座っていると、白人が乗り込んできた。運転者が彼女にその席を空けて後ろの方に移るように言ったが、彼女はそれを断固拒否して座り続けた。運転手は彼女を殴り、彼女は人種隔離法違反で逮捕されてしまう。

「その事件がきっかけでbus boycottが始まったんですよね。黒人たちは1年近くバスに乗らずに、どこへ行くのにも歩いたんです。バス会社は倒産寸前までに追い込まれました。なぜならもともとバスの利用者の3分の2は黒人だったからです」と言うと、彼女は「あなた日本人なのに、よくそんなアメリカの歴史を知ってるわね」と後ろを振り向く。

「実は私はeditorで、以前Martin Luther King Jrの本を作ったことがあるんです」と言うと納得したようだった。この本の著者はアメリカ史の権威の故・猿谷要先生。その中に私が決して忘れられない一節がある。「歴史には時として『神の配剤』としか思えないことがある。ある歴史的事件が起こる時、その場には後に有名になる歴史上の人物が必ずいなければならないのだ」。キング牧師は北部の大学で教授にならないかという誘いもあったのだが、それを断って、この南部のアラバマ州モントゴメリーの小さな教会の牧師となって赴任した。そして、まさにこの街でローザ・パークス事件が起こり、キング牧師はバスボイコット運動の主導者となる。そしてアメリカのみならず、全世界を巻き込んだ公民権運動が始まった。

そんなことを思い出していると、車は目的地のバスステーションに着いた。「この道をまっすぐ行くと、そこがダウンタウンだから、おいしいランチを食べてね」と親切に教えてくれる。彼女がスマホ画面の「目的地到着」をタップすると、私の画面も変わった。運転手の評価項目が出てくる。私は「プロフェッショナルである」と「とても感じがよかった」をタップした。その後に白い星が5つ出てきた。私は左からひとつずつ押していくと最後に5つ全部が黒くなると思い、一番左をタップすると、「1つ星」という評価になってしまった。いけない、一番右を押せば「5つ星」になったんだ。知らないとはいえ申し訳ないことをした。最後にチップのオプションが出てきたので20%を選んだ。

今日は娘の家族は、泊りがけでアメリカ空軍の航空ショーを見に行っている。夫の弟がヘリのパイロットをしているのだ。その空軍基地はアラバマ州モントゴメリーにある。