旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

スペース・マウンテンの背景は青い空?

ウォルト・ディズニー・ワールドWDW)の4つのテーマパークの中でも一番来場者が一番多いマジック・キングダムに行く。

朝、ホテルでシャトルを待っていると、若い女の人から「ディズニーに行くんですか?」と尋ねられ、そのままバスの中でも話を続ける。アメリカ人だと思ったが、レバノン人で、休暇でアメリカに来ていると言う。「私の知り合いにもレバノン人がいます。もう何十年も前のレバノン内戦の時に、彼女は日本人の夫と一緒に日本に脱出したんです。聖書英語の専門家なのですが、まさにそれが彼女にとってのExodus(エクソドス)でした。日本のニッサンの社長もレバノン人です」と言うと、彼女は「そう、カルロスね」と応える。レバノンNGOの仕事をしていると言う。スマホでその活動を紹介するホームページを見せてくれた。やせ細ったアフリカの子供が写っている。「アフリカにもよく行くのですか?」と聞くと「私はオフィス業務だけです」と応えるが、意思が強そうで、いかにもNGOのスタッフといった感じの人だった。彼女も私と同じマジック・キングダムに行くというが、あまり邪魔をしてはいけないので、パークの入口で「Have a nice day!」「Have fun!」と言い合って別れる。

このマジック・キングダム、真ん中にシンデレラ城があり、乗物もスペース・マウンテン、ビッグサンダー・マウンテンスプラッシュ・マウンテン東京ディズニーランド(以下TDLそっくり。というかTDLがLA郊外アナハイムやこのマジック・キングダムを参考にする形でつくられたものだ。しかしTDLをつくる時には、いろいろ乗り越えなければならない障害があったと言う。かなり昔に発行されたものだが「TDL 大成功の真相」という本がある、著者はTDL建設時にアメリカ側で交渉にあたったダグラス・リップ氏、翻訳は私が常日頃とてもお世話になっている経営コンサルタントで、作家・翻訳家でもある賀川洋さんだ。

LAアナハイムのディズニーランドにも、このマジック・キングダムにも、TDLにも、ゲートを入るとすぐに駅がある。アメリカの2つのパークでは、入口の駅でトレインに乗れば、「夢の国」とか「冒険の国」といった途中の駅で降りて、自分が乗りたいアトラクションにすぐ行けるようになっている。だが、日本ではトレインに乗ったらそのまま駅に戻ってくるようになっている。

では、なぜTDLでは途中に駅をつくれなかったのか? もちろんアメリカ側は、入場者のことを考えて、1周する間に駅を設置することを強く主張した。しかし当時の日本の運輸省が許可しなかったと言う。駅でトレインに乗ってまた同じ駅に戻って来るのならアトラクションのひとつなので問題ないが、途中に駅をつくる場合は、そのような法律があり、鉄道会社として認可されていないとダメだったのだと言う。アメリカ側も日本のあまりの規制の厳しさに驚いてしまった。今TDLとディズニーシーの周りを走るモノレールにはいくつか駅があるが、もともとあったパーク内にトレインの駅がひとつしかなく1周して戻ってくるようになっているのには、こんな経緯があったからだ。

埼玉県の狭山丘陵にある遊園地「西武園」の近くに、昔「ユネスコ村」というテーマパークがあった(その跡地に西武球場ができた)。世界中の建物が並んでいて、芝生の広場もあり、そこでお弁当を食べたのを覚えている。確か2つの公園を結ぶユニークな鉄道があり、それぞれに駅もあったはずだ。前例があるではないか、と思ったのだが、実は2つのパークは西武鉄道という、運輸省から認可を受けた電鉄会社が経営していたので、全く問題なかったのだと言う。

その本にはこんなことも書かれていた。LAアナハイムのディズニーランドには、水面下を動く「潜水艦」というアトラクションがあるが、TDLにはこれがない。なぜなら「日本には、戦争や軍隊を想起させるような乗物はふさわしくない」と判断されたのだと言う。当時の日本は、今とはずいぶん時代の空気が違っていたようだ。

話を今日のマジック・キングダムに戻すと、ファストパスの予約もせずに、真っ先にスペースマウンテンに駆けつける。まだ朝早かったので「40分」待ち。途中でトイレに行きくなったが我慢して、それこそ何十年振りに乗ることができた。

もう20年も前、今アメリカに住んでいる娘が小学生の時TDLに連れていった。彼女は学校の図画の時間に、スペースマウンテンに乗った楽しい思い出を描いていた。ジェットコースターの背景を黒いクレヨンで塗っていると、そこに先生がやって来て、背景を青い空にするように言い、描き直しをさせられたのだと言う。このようにして日本人の子供は発想の豊かさやユニークな個性を否定され、鮮烈な楽しい思い出も台無しにされ、型に嵌められていく。娘はこれまでアメリカと日本の教育をじっくり見極めてきたが、「やはり子供にはアメリカで教育を受けさせたい」と言っている。

帰りはシャトルではなく、たまにはいいだろうと思い早めにタクシーで帰る。ドライバーはハイチ出身で、フランス語を話した。私も昔フランスをバックバックで歩き回っていたので、多少ではあるがフランス語ができる。彼は日本人なのにフランス語ができる奴が乗ったので大喜び。私もゆっくりだが、意外とスムーズに口から出て来て意思疎通ができた。「昔取った杵柄」というやつだ。「2002年にアメリカに来た」と言う。私が「いつもバスに乗るとホテルまで1時間半かかる」と言うと、かれはpourquoi?「なぜ?」と聞く「タクシーなら15分か20分だよ」。私が「たくさんのホテルに寄るので時間がかかる」と言うと納得してくれた。運賃は35ドル。チップも含めて40ドル渡す。4400円だ。また余計な出費をしてしまった。

その夜、衣類の洗濯をしようとフロントに行き、1ドル札3枚をクォーター(25セント)コイン12枚に両替してもらったのだが、英語が支離滅裂になってしまった。フランス語のせいだ。