旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

地下鉄でスリに遭う

419日、一昨日はモンセラット、昨日はフィゲラスと遠出が続いたので、今朝はゆっくり起きる。お昼にホテルの人が教えてくれたレストランに行き、パエリアを食べる。だが、かなり塩辛く、口の中が痛くなってしまうほど。私は高血圧なので、日本では極力塩分を控えている。生卵でも目玉焼きでも醤油は1滴垂らすだけ。体重も落としているので、ご飯も茶碗に半分きり食べないようにしている。だが、ヨーロッパではそんなことは言っていられない。ものすごく塩辛いものを食べて、甘いデザートで中和させることしかできない。日本に帰って、すぐに人間ドックに行くのだが、私の健康状態は今どうなっているのだろうか? 結局そのレストランではパエリアを4分の1ほど残してしまいホテルに帰る。

さて、明日から何をしようか? 『地球の歩き方』を開いて、ピカソ美術館と、船のツアーでは行けなかったグエル公園に行くことにする。どちらも予約して行かないと、入るまでかなり時間がかかりそうだ。だが、どちらもクレジット決済の最後にはカードのパスワードを入力するようになっている。全く覚えていない。今までクレジットカード決済でいろんなものを買ったし、飛行機やホテルの予約もした。でも、これまでパスワードを入れたことがない。あてずっぽうでのいろいろやってみるが全部ダメ。パスワードを再登録しなければならない。だが、それが本当に面倒で、いろいろ試行錯誤しながら完了するまで1時間もかかってしまった。カード会社ももっと簡単にパスワードの再登録できるようにしてほしい。きっとものすごい数の苦情が殺到していることだろう。

ピカソ美術館は、明日の午前9時の一番早い時間を予約。最後の段階で「画面をプリントするように」という指示があったが、ホテルにいるためにできない。そこで画面の写真をiPhoneで撮っておくことにした。その後、その最終画面はどこかに消えてしまって見ることができず、「予約確認」のメールも送られて来ない。なぜだろうか? でも写真を見せれば、予約番号もわかるし、どうにかなるだろう。グエル公園はパソコンではなくiPhoneでやってみた。明後日の朝8時半。こちらはきちんと「予約OK」のメールが来た。

これでバルセロナを代表する名所は見ることができる。気分がよくなったので、街一番の繁華街にある「グラシア通り」にでも行ってみようと思い、ホテルを出る。日本食も最後にフロリダで食べたきりで3週間以上食べてないので、ちょっと寿司かうどんでも食べよう。4日間有効の地下鉄チケットもほとんど使っていないし、もったいない。駅に向かって歩き始めたが、シャツにカーディガンでは少し寒かった。夜9時になって日が暮れれば、もっと寒くなるだろう。ジャンパーを取りに部屋に戻り、また地下鉄の駅まで歩いた。

電車が来たので慌てて乗り込むと、最後の車両だったので物凄い混みようだった。にもかかわらず人を押しのけて1人の小柄な女性が近づいてきた。きっと次の駅で降りるのだろう。彼女は私を見てニコッとした。電車が次の駅に着く直前、彼女は頭を小刻みに降り始めた。それがあまりにも激しかったので、何かの発作かと思って心配になった。彼女はその駅で降り、電車が次の駅に向かっている時、ズボンの左のポケットをまさぐると、そこに入れたはずの小銭入れがない。その中には現金がお札で110ユーロとコインが5ユーロほど、クレジットカード、ホテルのカードキー、そして私の自宅の玄関の鍵が入っていた。やられた。スリにあってしまった。

ひょっとしたら先ほどホテルにジャンパーを取りに戻った時に、部屋に置き忘れてきたのかもしれないと思い、反対方向に行く電車に乗り代えホテルに急ぐ。フロントでI left my card-key in the room, or it was stolen with my money and credit card.と言って、新しいカードキーをつくってもらい、部屋に入って隅から隅まで探したが、小銭入れはなかった。

幸い右ポケットに入っていたiPhoneは無事だったので、すぐに日本のカード会社の電話番号を調べ、カードをストップしてもらう。同時にカードの保険窓口の電話番号を教えてもらう。「保険窓口は明日の日本時間の朝9時からです」と言う。フロントに行って「やはり盗まれていました。警察に行って盗難証明書をつくってもらわなければいけないので、場所を教えてください」と頼む。フロントの人もいつものことのように市外地図を出して、このホテルと警察署に印をつけ丁寧に行き方を教えてくれた。

カードはストップしたし、ホテルのカードキーも私の家の玄関の鍵も問題はない。現金の115ユーロだけが損害額ということになる。パソコンやパスポート、他のクレジットカードや銀行のカードは部屋のセイフティ・ボックスに入れてある。必要最低限を持って出かけたのが良かった。でも115ユーロだけでも保険で下りないだろうか? 

不幸中の幸いと思うことにし、別のクレジットカードを持って、ホテルの1階にあるレストランに行ってバーべキューを食べた。これがなかなかおいしかった。「燈台下暗し」とはこのことだ(これは海の灯台と思っている人が多いが、昔使っていた燭台の下が暗いという意味)。

朝起きて、カード保険の窓口に電話すると「クレジットカードの保険では現金の盗難はカバーすることができません」と言う。「財布自体の金額は補償できますが、使用期間を勘案しますので、かなり安くなくなってしまいます。また補償の際に3000円をいただくことになります」。私の小銭入れは東急ハンズ1500円でちょっと高いなあと思いながら買ったものだ。きっと0円に限りなく近いのだろう。しかも3000円を支払わなければならない。完全にマイナスだ。まあ15000円でいい勉強をさせてもらったと思うことにしよう。

もう何年も前のことだが、マドリッドで地下鉄に乗っていたら、若い男から「セーターに何か付いているから脱いた方がいい」と言われたことがある。「ああこれか、来たな」と思い、ポシェットを見ると、ちょうどその隣にいた男がジッパーに手をやり半分開けたところだったので、慌ててジッパーを閉め直したことがあった。その間、次の駅に着くまでの23分間、じっと目を合わせたまま。何と気まずかったことか(気まずかったのは、私ではなく彼らだったのだが・・・)。扉が開くと、彼らは一目散にホームを逃げていった。

そんな体験を何度もしているし、今まで外国で盗難に遭ったことがなかったので、ちょっと自信過剰になっていた。それにしても、お見事というしかない。ズボンの左のポケットはカーディガンの裾の下に完全に隠れていたはずだ。めくれば絶対にわかるはずだが、全く気づかなかった。電車が駅に着く前に頭を激しく振ったのは、そちらに気を引かせることで、財布を確認させないようにしたのかもしれない。15000円で良い勉強になったと諦めることにする。警察に行って何時間も盗難届の書類をつくる必要もなくなったし、あと2日きりないのだから、観光を楽しむことにしよう。

私の娘は2か月かけてヨーロッパを旅行していた時、2回連続で現金とクレジットカード、銀行のキャッシュカードを盗まれた。次のクレジッカードができるまでお金は降ろせない。幸いスペインのグラナダに私の友人がいたので、娘と一緒に旅をしていた友達を泊まらせてもらうように頼んだ。娘は友達からお金を借りて列車に乗り、どうにかグラナダまでたどり着いたのだった。3日間泊まらせてもらっている間に、私はその友人の口座にお金を振り込んで、娘に渡してもらうように頼んだ。

娘はそんな体験を息子たちにも話したのだろう。フロリダの娘の家で孫たちに「おじいちゃんはお船に乗って海を渡ってスペインに行くんだよ」と言ったら、上の5歳の孫が即座に言った。「スペインには泥棒がいるよ」