旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

私はバングラデッシュ人です

731日に前に勤めていた出版社の同僚たちと昼食、3時にNHK文化センターに行き10月に行う「英語はこんなにおもしろい」という講座のパンフレットの顔写真の撮影。その後、以前旅行会社を経営していて、いまは投資家になっている高木さんと神保町で夕飯を食べる。

8月に入っておよそ半月の間は、ブログも本の原稿も書かずに、テレビを見たり週刊誌や本を読んだりして過ごした。全くの空白の日々。暑いので何もする気が起こらないのか、それともたるんでいるのか? 高木さんは「これまで何十年も編集者としてミスを起こさないように、誤植を出さないように、ものすごい神経を使って仕事をしてきて、やっと解放されたのだから、しばらくはリラックスして過ごした方がいいですよ」と言ってくれた。

そして814日(火)、いまロンドン・ヒースロー空港近くのホテルでこのブログを書いている。813日(月)にタイ航空の飛行機でバンコクまで5時間半、2時間トランジットして、さらにイギリス行きの飛行機に乗り11時間半という長旅だった。

バンコク行きの飛行機で隣の席に座っていたバングラデッシュ人と話が弾む。なかなかの好青年、渋谷のメガドンキの向かいの店で働いていて、埼玉の日本語学校にも通っているという。そういえば、私がしばしばお昼を食べに行くイタリアン「クッチーナ」のコスルさんもバングラデッシュの人だ。

私が勤めていた出版社も渋谷の宇田川町にあり、ローカルな話で盛り上がる。「ホテル・クレッセントの近くとてもおいしいカツ丼の店があって、会社に勤めている頃にはそこによく行った。今度行ってごらんよ」と言うと、「私はバングラデッシュ人なので」と遠回しに言う。そうか! イスラム教徒は豚肉は食べないんだ。カツって豚肉なんだよな。ずいぶん海外を歩いているわりには、宗教的な問題でうっかりすることがある。

もう何年も前のことになるが、同じようなことがあった。年末と正月の休暇でアメリカに行った時、1週間アトランタに滞在したのだが、外は寒かったので毎晩ホテルのレストランで食事をした、そこには黒人のウエイトレスのおばちゃんが何人かいて、すごく仲良しなった。「サザン・ホスピタリティ」という言葉がある。「アメリカ南部の暖かいおもてなし」ということだが、それを実際に感じることができた。

アトランタ空港に着いたのは朝7時半だった。ホテルのチェックイン時間は午後2時。部屋に入るまでに長時間待たなくてはならない、だからホテルに着いたらすぐに部屋に入って寝られるようにと、前の晩から予約していたのだった。だが、クリスマスも近く旅行者が多かったために入国審査に時間がかかり、空港からモノレールに乗りマルタという地下鉄に乗り代え、ホテルまで歩いてチェックインを済ませた時には、もう12時半になっていた。なんだ1時間半待てば、部屋に入れたんじゃないか、と思って本当に損した気分になった。

部屋に荷物を置いて、すぐにホテルのレストランで朝食なのか昼食なのかわからない食事をした。その時にウエイトレスのおばちゃんたちに「前の日から予約をして損をした」という話をしたら、ひとりが「それは残念だったわね」と同情してくれ、注文した料理が出てくる前に「This is for you!」と言って暖かいトマトスープを出してくれたのだった。とてもおいしくて、疲れている体に沁み込むような温かさだった。

そんなこともあって、毎晩そのレストランに行っては彼女たちと親しく話をするようになった。12月23日に私が「明後日チェックアウトする」と言うと、黒人のおばちゃんたちはみな口をそろえて「24日と25日は休みだからもう会えないけど、元気でね」と言ってくれた。クリスマス休暇だ。その時に「みんなクリスマスで休んでしまったら、どうなるんですか? レストランも閉まるんですか?」と聞いたら、「大丈夫よ。ホテルだからレストランはやってるわ」と言う。

24日、ほとんどの店は休みになっていたが、唯一開いていたホテルのレストランで夕飯を食べた。そこにいた男性のウエイターに「みんなクリスマスで休んでるのに、あなたは働かなくてはならない。残念ですね」と言うと、その人は「私はバングラデッシュ人です」と言った、イスラム教徒であることを遠回しに。クリスマスは彼には関係がなかった。日本ならお寺の坊さんでも神社の神主でも、みんなクリスマスにはケーキを食べたりして祝う。そんな日本の感覚でいると、相手に失礼なことを言ってしまうことになる。

さて今現在に話を戻す。朝7時半にロンドン・ヒースロー空港に着いたのだが、ホテルのチェックインは午後2時。もう家を出てから24時間近くが経っている。空港で空いているベンチを探して横になっていようかとも思ったのだが、幸いなことに飛行機で少し寝られたので意外と元気だった。そこでまずホテルに行って荷物を置いて、地下鉄(イギリスではundergroundと言う)でロンドンの名所にでも行ってみようと思い始めた。

ターミナル3の中央バスターミナルの横にローカルバスの乗り場があった。係員らしき人に「Bath Roadのレオナルド・ホテルに行きたい」と言ったら、19番と書いてあるバスストップに来るバスなら、ほとんどそこに行くと言う。ターミナルに戻って「オイスターカード」というイギリス版のスイカ自動販売機で購入。

バスに乗り、運転手にBath Roadに行くか尋ねたら「Yes!   2番目のバスストップだ」と教えてくれた。そのバス停が近づいてくると、手前に「レオナルド・ホテル」という看板が見えた。バス停と目と鼻の先だった。

まだ9時半だったが、フロントに行くと、女性のフロント係が「部屋が空いているので・・・」と言ってチェックインさせてくれた。ロンドンの街に行くことは諦めたが、もう歳なので、無理は禁物だ。

部屋の窓からは滑走路が目と鼻の先。飛行機が次から次へと離陸していくのが見える。でも窓を閉めれば騒音は聞こえない。シャワーを浴び、カーテンを閉めて夕方の4時まで熟睡。最初は空港のベンチで寝ていようと思ったのに、ふかふかのベッドで寝ることができた。えらい違いだ。

 

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1階のレストランでトマトサラダとピザを食べ、最後はアイスクリームでしめる。32ポンド、日本円なら4800円。日本のサイゼリアなら1000円ちょっとで食べられるはずだ。

そしていま部屋に戻り、このブログを書いている。9月に日本に帰ったら、いくつか講演もあるし、やはり英語に関する本も書いていきたい。あまり器用な方ではないので・・・というか、精神的にひとつのことに集中しないと、完成度の高い仕事はできないので、本の原稿とブログの執筆が両立できるか、本当に不安だ。

旅先でも、ブログを書くためだけに旅行をしているような気がすることがある。なんだか本末転倒・・・。でも8月に入って、猛暑の中でグダグダしている時に読んだ新聞に、ある作家(誰だか忘れたが)のこんな文章が引用されていた。「日記を書くための日常生活があってもいいのではないか」。そうか、ブログを書くための旅があってもいいのかもしれない・・・。

何もしなかった空白の半月でも、知らず知らずのうちに得るものがあったようだ。