旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えました。いま世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆とともに、旅先ではこのブログを書いています。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

白いチョークの絶壁「セブンシスターズ」

818日。前の晩9時に着いたブライトンのホテルは最悪だった。「ホステル」というだけあってバックバーカーや多く宿泊しているユースホステル、あるいはYMCAのような感じの宿泊所。二段ベッドで一部屋に8人が2段ベッドで寝る部屋もあるのだが、私はひとり一部屋でトイレ・シャワー付きの部屋を予約していた。この宿泊所の中では特別室みたいなもんだと思っていた。だが部屋は汚く狭い。ベッドに寝るのもはばかられるような不潔さだった。

バックパッカーが泊まるようなホテルの口コミには十分注意しなければいけない。彼らは「安い」ということをことさらに評価する。コスパが良ければ高評価にしがちなのだ。高くて豪華なホテルだと、お客さんの期待度も高いので、ちょっとしたことで低評価になる。でも安いホテルは、宿泊客があまり多くを期待しないだけあって、口コミの評価は異様といえるほど高くなることがある。それは承知だったのだが、今回はそれに騙されてしまった。

できるだけこのホテルの部屋にはいたくなかったので、私としては特別に朝早く起き、スーツケースを預けて8時半のバスで「セブンシスターズ」という海辺の白亜の崖を目指す。2階建てのバスで走ること1時間。一番近くのバス停に着いたのだが、どっちに行ったらいいかわからない。レストランの看板が見えたので、まずそこで朝食。目玉焼きとベーコン、ソーセージにマッシュルームのバター焼き。特にマッシュルームが絶品。マッシュルームってこんなにおいしかったんだ。

近くに観光案内所があったので地図をもらう。白い崖にはいくつもの行き方があるようだが、私は白い崖が一番遠くまで何重にも見えるコースを選んだ。牛や羊が放し飼いにされている牧草地や森の中を歩くこと約30分、海辺に着く。目の前には高さ150メートルもの白亜の崖が見える。「白亜」は英語でchalk、「チョーク」だ。私が学生の頃は先生が黒板に板書するのに「白墨」を使っていた。それがチョークだ。いまも学校で使っているのだろうか? だいたい教室に黒板自体がないのか?

「イギリス」は、その昔「アルビオン」とも呼ばれていた。古代ローマ時代にイギリスに遠征したカエサルが、海からブリテン島の白い崖を見て「アルビオン」(白い国)と読んだことから来ているという説もある。albとは「白い」ということだ。「アルバム」も、ラテン語で人々に告知をするためのalbus「白い板」から来ていて、それが切手や写真を貼る白いノートからレコードまでを意味する言葉となった。

イギリスの英仏海峡に面した白い絶壁がいくつもあるが、セブンシスターズはその中でも最も有名な景勝地だ。

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またバスに乗って1時間、2時にブライトンに戻り、ホステルでスーツケースをピックアップ。大急ぎでタクシーに乗り駅に向かう。3時にポーツマスのホテルで妻と会うことになっている。妻は7月と8月の2か月間、ボンマスという街の語学学校に通っている。

電車で1時間、ポーツマス3つ手前のFrattonという駅に着きホテルにチェックイン。部屋に入らずにそのままフロントの前で待っていると、30分ほどして妻がタクシーでやってきた。とても元気そう。若いことからの夢だった海外留学をこの歳でやっと叶えている。

我々の頃は海外留学なんて夢のまた夢だった。学生時代に金沢から来ていたクラスメイトがナンシーというドイツ国境に近い街の大学に留学した。ナンシーと金沢は姉妹都市で、毎年ひとりが選抜されて1年間留学できたのだ。試験を受けた後はくじ引きだったと言う。本当にうらやましかった。あと産経スカラシップなんていうのもあった。あの頃は留学がほんとうに狭き門で、優秀な学生でないとできなかった。

妻はすでに1か月半、若い学生に交じって英語学校で勉強している。日曜日は学校の主催するオプションツアーもある。Bathという古都やストンへンジにも行ったし、明日の日曜にはワイト島という人気観光地へのツアーにも参加すると言う。

ホテルのロビーで話し込んでいたら、歩道を大勢の人たちが歩いている。フロントの人に聞くと、ホテルのすぐ裏にフットボール(イギリスでは「サッカー」をこう言う)チーム、ポーツマスサッカー場があって、いまオクスフォードとの試合が終わったばかりだと言う。妻は550分のバスでボンマスに帰らなくてはいけない。慌ててフロンでタクシーを呼んでもらうと、「サッカーの試合が終わったばかりでホテルに来るのに20分かかる」と言う。それでは間に合わない。仕方なしに近くのバス停を教えてもらい、そこから港近くのバス中央ステーションに行く戻ることに。45分で行けるだろうか? かなり焦ったが、後で妻に聞くと出発の10分前にはバスに乗れて、ボンマスには夜8時に到着したと言う。

夕飯は近くのケンタッキーフライドチキンで済ませ、部屋に戻ってブログを書こうとしたが、珍しく朝早く起きたこともあり疲労困憊で書かずに寝てしまった。

さて、明日はインターナショナル・ポートからフェリーに乗ってフランス・ノルマンディのカーンという街に向かう。船で国境を越えるのだ。