旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えました。いま世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆とともに、旅先ではこのブログを書いています。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

ウィーンで聴くウィンナー・ワルツ

6月12日(水)、時差ボケもあるのに、明け方3時までこのブログを書いていた。ブログを書くための旅なのか? 昔の旅とは違うことは、もうひとつ。何かパソコンとかiPhoneなどを使いこなすことに汲々としていて、旅そのものを堪能することができない。どんどん新しい通信技術が開発され、毎回それに翻弄されている自分がいる。

今もブログを書いていると、パソコンの充電がどんどん減って0%に近づいていた。コンセントにC3型というソケットを差し込み変圧器を通して電源をつないでいるのに、どうやら電気が来ていないようだ。どうすればいいかわかない。これで今回の旅のブログも、パソコンの電源が確保できずに断念か? 試しにiPhoneも同じようにつないでみたが、やはり電気が通っていない。そこで思い切って変圧器を外してみた。もし失敗すると、iPhone自体が壊れてしまい、大変な支障を来す可能性もある。

だが、やってみやら電気が通ったではないか! パソコンも同じようにしてみたら、電気が通った。『地球の歩き方』をよく読むと、オーストリアでは「変圧器を通さないと使えない電気製品もあります」となっている。ということは「変圧器を使わなくても大丈夫な製品もある」ということだ。

今晩8時30分にはシェーンブルン宮殿でコンサートがある。最初の計画では、10時頃ゆっくり起きて、宮殿をゆっくり見て、夕方6時にレストランで食事をしてから、目と鼻の先のコンサート会場に行けば、時間の使い方にしても、移動にしてもスムーズで合理的だと思っていた。

だが、こんな暑い日に、宮殿内部を見て、広大な庭園を歩いて、汗をかいて疲労困憊した状態でコンサートには行きたくない。庭園の宮殿とは反対側に丘があり、グロリエッテという記念碑がある。宮殿からそこまで急斜面を登って20分かかる。私の脚なら30分以上だろう。すると往復で1時間。きっとクタクタになっているだろう。そんな状態を考えると、いくらその宮殿でコンサートがあるからと言って、同じ日にスケジュールを詰め込むのは、やはりやめた方がいい。

そんなことを考えて、夕方までは、どこか手近なところに行こうと考えを変えた。ホテルから歩いて20分くらいのところにプラター公園があり、そこには映画「第三の男」に出てくる大観覧車がある。それに乗ってみることにした。そして、まだ時差ボケも残っているので、午後2時か3時にはホテルに戻り、少し睡眠をとってから、体調を整えてコンサートに行くことにした。

世界の都市の観光地には、東京で言えばスカイツリー、パリならエッフェル塔トロントならNCタワーなどの塔が多い。名前は忘れたが、ニュージーランドオークランドアメリカ・シアトルにも、その都市を代表する塔が一大観光スポットとなっている。私は高所恐怖症のくせに、これまでそのどれにも昇ってきたが、いつも上から街を見下ろしながら恐怖にかられ、「こんな思いをするなら来なければよかった」と思う。

今回は観覧車だが、よみうりランドとか葛西臨海公園などの観覧車も子供と一緒に乗った時も、ものすごい恐怖に襲われた記憶がある。

今日は風も強く、ひょっとしたらこのアトラクションは中止になっているかもしれないと思ったが、幸か不幸かちゃんと動いていた。窓口でパスを見せ、入口の機械で自分でスキャンしてゴンドラに乗り込む。一度に12人が乗れる大きな観覧車で、私の他に8人ほどの人も一緒だ。

やはり怖かった。風がかなり強いし、旧式のものなので、下で人が乗り込むたびにストップする。最初は、風速計で風の強さを計っていて、一定の風速を越えるとストップするのだろうと考えていたが、そんな最先端の技術は使っていないようだ。一番上に来た時には、強い風がゴンドラの開け放した窓から吹き込んだのだが、かなり長い時間止まっていた。「下の人、早く乗り込んでよ」と思いながら、両手で手すりを強く握りしめ、遠くの街並みを見てることで、ひたすら耐えた。

この観覧車で11ユーロ。昨日買った6日間有効のパスは、ほとんどの施設で使えるようだが、どんどん使っていかないと2万円の元が取れない。上から「マダム・タッソー」の蝋人形館が見えた。そこの入場料が23ユーロ。高いが、とにかくどんどん使って元を取らなければならないと思い、半ば強迫観念で入ることにする。

マダム・タッソーは東京にもあるようだが、世界中の観光地ならどこにもある。最後に入ったのはもう25年も前、アメリカとカナダとの国境にあるナイアガラだったと思う。私は、もう亡くなった人だけ蝋人形になるのだと勘違いしていたが、生きている人でも映画俳優ならブラット・ピッド、歌手ならマドンナやジャスティン・ビーバーなどの人号もあった。オーストリアやドイツの政治家や学者も多いように思えたが、こんな人がこんな体格でこんな顔をしていたのか、と実感することができ、意外と楽しかった。

ホテルに戻り、夕方6時まで睡眠をとって、シューンブルン宮殿に向かう。地下鉄のU1に乗り、カールス・プラッツでU4に乗り代えて20分ほど意外に近かった。路上で買ったチケットなので大丈夫かと思ったが、すんなりと入れた。彼らを信用して良かった。宮殿の部屋なので、縦に細長い会場で、普通の椅子がたくさん並べられていた。

シェーンブルン宮殿オーケストラの演奏は素晴らしかった。男女2人の歌手も会場に乱入するように登場して盛り上がる。なにか恋人同士が喧嘩するオペラのワン・シーンのようだ。モーツアルトヨハン・シュトラウスの名曲の演奏にも酔いしれた。

美しく青きドナウ」も素晴らしかった。やはりウィーンで聴くウィンナーワルツは最高だ。最後は「ラデツキー行進曲」(私はなぜかいつも「威風堂々」とごっちゃになる)。クラシック・コンサートでは演奏者と観客が一緒になって手拍子で盛り上がる定番の曲だ。

会場は冷房もなく暑くて、扇子で顔を仰いでいる人もいたが、夜が更けるにしたがって少しずつ涼しくなってきた。休憩の時に少しの時間、宮殿から庭園の方に出てみた。甘い果実の香りがした。夜風は少し暖かかったのに、心は爽やかだった。