旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えました。いま世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆とともに、旅先ではこのブログを書いています。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

フランツ・カフカ博物館。展示ケースの中には「虫」が・・・

6月22日(土)、朝ゆっくり起きて昨晩コインランドリーで洗濯している間にスーパーで買っておいたパンとハムを食べる。プラハ中央駅の観光案内所で、市内の地下鉄やバス、路面電車が自由に乗り降りできるプラハ・パスを購入。2日有効のものはないのかと聞くと、「1日券の次は3日券」だと言う。310コルナ。日本円換算は5倍すればいいので1550円だ。「パスは地下鉄に乗る度に毎回パンチしなければいけないのか? それとも1日に1回か?」と聞くと、「パスを使い始める時だけでいい」と言う。こんな些細なことでも知っていないと、検札に見つかって高額の罰金を要求されたりするので、しつこいほど確認した方がいい。

次に列車のチケット・カウンターへ。窓口は「Domestic」と「International」に分かれていた。Internationalの係員に「明後日、列車でBerilnに行くんですが、予約は必要ですか?」と聞くと「必要ありません」と言い、すぐに「でも予約した方がいいと思ったらしてください」と付け加えた。日本で買った時刻表によれば、予約しなければ乗れない「全席予約制」の列車と予約していれば満員でも優先的に乗れる「任意予約制」の列車があるようだ。まあ、ハイシ―ズンではないので、これまでも列車がガラガラだった。予約なしで乗ることにしよう。

昨夜両替したコルナも夕飯のパンを買い、コインランドリーで洗濯したりして少なくなったので、ATMで1000コルナほど降ろす。海外でも預金からお金を降ろせる銀行カードと後から引き落としされるクレジットカードを持っている。銀行カートで降ろそうとするが。どうもうまくいかない。仕方なしにクレジットカードで1000コルナ(約5000円)を降ろす。

これで、いろいろな懸念が全部片づいた。中央駅近くの「ミュージアム」という地下鉄駅から、あの有名なカレル橋に行くことにする。緑色の「A線」という地下鉄に乗って3つ目、Staromestskaという駅で降りて10分。14世紀にかけられたというプラハで最古の石橋だ。世界中から集まった観光客で大混雑。520mと長いのと、人が大勢行きかっているので、なかなか向こう岸にたどり着かない。

 

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橋を渡り切ると、右側のテントの下で営業していカフェがあったのでそこに入り、シーフード・パスタを注文する。隣のテーブルでイタリア語をしゃべっている家族が食べているのを見て、とてもおいしそうだったからだ。

パスタを食べていると、急にものすごい勢いで雨が降ってきた。背中が濡れ始める。椅子とテーブルを少し前にずらすと、ぎりぎりで雨を避けることができた。食後のコーヒーを飲みながら『地球の歩き方』にあったプラハ市街図を見ていたら、すぐ近くに「フランツ・カフカ博物館」があるではないか。このガイドでも、文章の解説はなく、ただ地図に中に小さく表示されているだけだったが、これはぜひとも行かなくては。

入場料は180コルナ。900円。オーディオガイドはなかったが、展示パネルの英語の解説をじっくり読み進んだ。カフカプラハユダヤ人地区で生まれ育った。ここにはチェコ人、ドイツ人。ユダヤ人が住んでいた。民族も言葉も宗教も誓う人々が狭い地域に肩を寄せ合うように生きていたのだ。

カフカの代表作『変身』もそんな環境で育ったからこそ、書くことができた小説ではないかと思う。この異質なものが混然一体となった地区では、もし自分がチェコ人だったら、もしドイツ人だったら、人生はどうなっていただろうかとしばしば想像をたくましくしたに違いない。ある朝、自分が大きな虫に変身していたというストーリーは、常に自分とは違う異質なものに取り囲まれた環境から生まれたのではないかと強く感じたのだった。

ガラスケースに入っていたカフカ自筆の原稿を見ている時に、隣の人が「Coinsidentally...」(偶然にも・・・)と私に声をかけ、「この中にinsect(虫)がいますよ」と小さなハエを指さす。ロシア人で、1人で旅行していると言う。文学好きな私だから理解できたが、他の人だったらこの「偶然」の深遠な意味がわかっただろうか?

村上春樹は「フランツ・カフカ賞」を受賞している。この賞はノーベル文学書への登竜門と言われている。いつになったらノーベル賞を獲れるのだろうか? でも村上春樹には賞狙いではなく、いつまでも普通の文学好きな人達の気持ちに寄りそう小説を書き続けてほしい。

プラハ城の南側を通り、マーネス橋のたもとに来た。このまま地下鉄で帰ってもいいが、せっかくなので路面電車の乗って街並み人通りを見ながらホテルに帰ることにした。ちょうど停留所があった。どんどん路面電車がやって来るが、どれに乗ったらいいいのか見当もつかない。ホテルは中央駅の近くだ。そのあたりを見ると「23番」の路面電車が走っているようだ。ちょうど「23」の電車が来たので飛び乗る。iPhoneの地図で見て、一番近くまで来たら降りて、また違う電車に乗り換えることにする。

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橋を渡り少しずつ中央駅に近づいて行くが、しばらくすると離れ始めたので次の停留所で降りる。ここからホテルまで歩けるかなと思ってiPhoneマップを見ると、そこには「車」と「徒歩」以外に「交通機関」を利用しての行き方も表示されているではないか。「歩き5分で路面電車『6』に乗り、3分で到着」となっている。

街中を複雑に交差している路面電車の路線情報までも、小さなiPhonで知ることができる。すごい時代になったものだ。