旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えました。いま世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆とともに、旅先ではこのブログを書いています。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

プラハ城を見て、国際長距離列車でベルリンへ

6月24日(月)、朝起きてホテルで朝食。部屋でパッキングを済ませ10時半にチェックアウト。荷物を預かってもらい、バックパックを背負ってプラハ城に向かう。昨日はブログを昼まで書き疲労困憊、そのままホテルから外出せず夕方まで寝てしまった。急遽完全休養日にしてしまったのだ。

だから今日は忙しい。できれば午後1時までにプラハ城と隣の国立美術館を見てまわって、2時前にはホテルに戻ってスーツケースを受け取り、232分発の国際長距離列車ECでベルリンに行きたい。

地下鉄A線のMuzeumという駅で電車に乗ろうとした時、ちょうど真ん中あたりに大勢の集団が待っていた。団体旅行者らしい。私はそこを避け一番前の車両に乗った。

電車はプラハ城に一番近いMalostranskaという駅に着いた。降りようと思ったがホームがない。あれ、反対側がホームかなと思って見ると、そこには暗闇の中に線路があるだけ。そうか、まだ電車は駅に着いていないのかと思っていると動き始めた。電光掲示板に次の駅が表示された。そうか、Malostranskaの駅は何らかの理由で閉鎖されているのか、あるいはこの電車は特別に停車しないのかもしれない。

次の駅で観光客らしき人が何人か降りたので、私もそれに続いた。一瞬ひとつ前の駅まで戻ろうかという考えもよぎったが、ここからプラハ城に行った方が近いのかもしれないとなぜか思ってしまった。

iPhoneを頼りに城を目指すが、なかなかたどり着かない。丘の上の公園に来てしまった。お城がはるか下の方に見える。駅を出て40分、やっとお城の一番端の入場口のところにたどり着いた。Malostranskaの駅で降りれば、たった5分で来られたところだ。ものすごい時間のロス。

お城のチケット売り場はまだまだ先だ。城内のなだらかな坂道を15分ほど歩き広場に出た。つきあたりのチケット売り場に到着するが、建物の外まで行列ができている。仕方なしに一番後ろに並ぶ。もう11時なってしまった。果たして城の中を全部見て隣の美術館にも行けるのだろうか? 

10分ほど待って、とりあえず建物の中に入った。でもまだまだ行列は長い。右側の部屋にはカウンターが4つほど見えた。左の部屋は窓口が2つあったが、音声ガイドを貸し出すカウンターのようだ。その部屋から女性スタッフが出てきて、大声で「こちらの部屋でも入場チケットが買えます」と言う。

私はその左の部屋に入った。窓口が2つあった。奥の方が早く終わりそうだったので、そっちに並んだ。ところが前のイタリア語を話している二人の女性が係員と何かもめている。その間に隣の窓口では5人ほどがチケットを買って外に出て行った。

並び方には2種類ある。「クシ型」「フォーク型」だ。複数ある窓口それぞれに並ぶのが「クシ型」、列を1列にして先頭の人から空いた窓口に進むのが「フォーク型」だ。アメリカやヨーロッパでは「フォーク型」の並び方が普通だ。日本では「クシ型」が多かったが、何年か前からコンビニやトイレなどでは「フォーク型」が多くなっている。

この部屋に入った時、前の人のチケット購入がすぐに終わるだろうと思ったのが間違えだった。15分たってもまだ目の2人が窓口の男性と何か言い合っている。私の後ろに女性が並んだ。「もう20分も待っているんだ」と説明する。中国人だと言う。私は「もうギブアップする」と彼女に言って、隣の窓口の列の一番後ろに並び直した。「グッドラック」とその中国人は私に言った。

私の前には5人ほどが並んでいたが、意外と早く自分の番が来た。まだ隣ではもめ続けている。日本語の音声ガイドはないと言うので、入場チケットだけ買った。クレジットカードで料金を払うと、女性スタッフがチケットを裏返して説明する。「今日は故宮は閉まっています」と言って、時計数字の「1」に×をする。「それ以外のこの数字の建物に行ってもらえれば入場できます」と説明してくれた。私はThank you.と言って外に出た。一番近い駅で降りられなかったこと、並んだ窓口で前の人がもめていたことで1時間以上も時間をロスしてしまった。

最初に番号「2」の「プラハ城の歴史」という建物に行こうとしたらチケットがない。あれ? どこへいったんだろう? ズボンやシャツのポケットの中をまさぐったが、どこにもない。領収証はあるし、受付の女性も私が払ったことを覚えているかもしれない。それならチケットを再発行してもらえるだろう。そう考えて、また窓口に並び直す。前の6人が終わり私の番が来た。「さっきお金を払ったんですが、チケットがないんです」と言うと、彼女はすぐに横にあったチケットを差し出して「ちゃんと受け取ってくださいね」と言った。お詫びとお礼を言って外に出る。わかった。チケットを裏返して、展示場の番号に×をしたりして説明してくれたことで、私は瞬間的にそれがチケットでなくパンフレットだと勘違いしてしまったのだ。

2番の「プラハ城の歴史」からスタートして6か所ほどの展示を見終えると、115分になっていた。2時にホテルに戻れば、駅まで10分。232分のベルリン行きECに乗れるだろう。

国立美術館をサッと見て、すぐにホテルに戻ろうと思ったのだが、それがなかなか見つからない。美術館の方向を指し示す標識もあり、その方向に行ってみても、それらしき建物はない。ショップがあったので聞いて見ると、前のアーケードのような門を入った先にあると言う。坂を下ると、美術館の係員らしき人がいたので聞くと、「今日は月曜日で休みだ」と言う。

時計を見ると130分。急いで戻れば、列車に間に合うかもしれない。ベンチに座り、バックパックから時刻表を取り出し確認すると、「432分」にECがある。ベルリン到着は8時。まだ十分に明るい時間だ。

もう3日前のように、スーツケースを転がして駅に走り込むようなことはしたくない。だが、これが今日最後のベルリン行の列車。10時、12時、2時、4時の32分の出発となっているが、なぜかそれ以降の列車がない。午後6時の列車で途中の駅まで行って、そこで乗り換えて深夜0時に着くか、それがダメなら寝台車で行くしかない。到着は明日の朝だ。するとホテルの宿泊代がまるまる1日分ムダになってしまう。

私は432分のECに乗ることにした。だた、その列車を逃すことはできない。今日最後のベルリン行きECだ。最悪の事態を考えると、混んでいて乗れないとも限らない。だから駅に着いたら、すぐに予約することにしよう。

ゆっくり坂を降り、広場から路面電車に乗り途中で別の線に乗り換えてホテルの近くまで来た。まだ時間はある。ゆっくりお昼を食べてホテルに戻った。

スーツケースの引換券をフロント係の女性に渡していると、途中から割り込んでフロントの彼女に話しかける若い女性がいた。中国人か韓国人だと思う。フロント係は「いまこのお客様とお話をしているんです」と言ったが、私にはまだ時間がある。「どうぞ先に話をしてださい」と順番を譲った。きっと何か緊急の事態が起こったのかと思ったのだが、私の手続きが終わってからでも全く問題のないようなことだった。

私は若い頃からずいぶんひとりで旅行をしてきたが、順番を無視してまで聞かなければいけないような緊急事態に遭遇したことが何度もあった。昔はそんな長い休暇は取れなかった。1週間か長くても10日間。そんな余裕のない旅をしていたから、ヨーロッパでは普通に起こり得ることでも慌ててしまい、自分で“緊急事態”にしてしまったのだろうと、今になって思う。

駅に着いて、インターナショナルの窓口で予約をする。コンピューターの画面がちらっと見えた。席がずいぶん赤くなっている。赤い席が予約済みなのだろう。今日最後のベルリン行きECだ。やはり予約をして正解だった。ウィ-ン駅で予約した時には席ではなく列車の車両の予約だった。どこに座ってもよかった。確認してみると、今回は「座席の予約」だとのことだった。

さて私の乗る列車は何番線なのか? 駅構内の電光掲示板を見る。列車番号と時間は表示されているが、プラットホーム番号はまだだった。みんな電光掲示板を見上げ、ホームを確認してからホームに進んでいる。

発車15分前になっても、まだホーム番号が出ない。毎日のことなのになぜホームが決まらないのか? そんな付け焼刃でギリギリの時間にホームを決めて事故は起こらないのか?  日本では列車が発着するホームが事前に決まっている。それが異常なのだろうか?

10分前に「6」という数字が出た。「6番線」だ。みんな一斉に歩き出す。一番離れたホームへと階段を上がると、列車が停まっていた。ファーストクラスは一番後ろだ。

ゼカンド・クラスとの間に食堂車がある。さすがに国際列車だ。

私の席は「36」。重いスーツケースを引き上げて列車に乗り込む。ラックがあったのでスーツケースを置いたが、私の席はさらに先にあった。ここからではスーツケースが見えない。盗難にあったら、これからの旅は滅茶苦茶になってしまう。まあ昔と違って、カギは暗証番号で開くようになっているから、盗難はかなり減っているのだとは思うが。

車両には進行方向の右側席が1つ、左側に2つがあった。日本のように全部席が進行方向を向いていない。半分の席は前を向いているが半分は後ろ向きだ。真ん中だけ後ろ向きと前向きの席が向かい合っている。私の席は、その向かい合う席の前向きで窓側だった。すでに通路側に太った人が座っていた。向かい側にも人が座っていたが、その席を予約した人が来たので、どこか他の席に移って行った。きっと予約なしで乗った人だろう。

列車は発車時刻になっても動かなかったが、15分ほどして走り始めた。私は隣の人に声をかけて通路に出て、スーツケースが見える席に移った。

左側の2人掛けの席に座った。チェコとドイツの田園風景をゆっくり楽しもうと思ったが、陽の光がまぶしくカーテンを閉めて眠るしかなかった。実は毎日長文のブログを書いているので、列車で書いたら時間の節約になるのではないかと思い始めていた。ところがパソコンはスーツケースの中に入れてしまった。バックパックの中に水の大きなペットボトルを入れようとした時、万一水が漏れてしまったらまずいと思ってパソコンを出してスーツケースに入れてしまったのだ。狭い車内で大きなスーツケースを広げるのも気が引けて、そのままでいるしかなかった。

検札の車掌が巡回してきた。私はユーレイルパスと予約チケットを見せて「もし予約した人が来たら元の席に戻ります」と言ったが「問題ありません」と言う。周りには予約なしで乗車した人だろう、席の予約をした人が来るとどいて他の席に移っていた。どうも「予約」のシステムがよくわかない。男性の車掌は私のユーレイルパスと予約券をチェックし終わると、「This is for you.」と言ってペットボトルの水をくれた。たくさんのミネラルウォーターを積んだラックを引きづりながら検札をしていたのだ。ちょっと見では、車内販売のようだ。

ベルリンのホテルは駅から近かったんだろうか? これまではクルムロフを除き駅から数百メートルのホテルだけを選んで予約した。だがベルリンの駅はどうだったのだろうか? 自分で予約しておきながら記憶が定かでない。iPhoneで確認しようとしたが電源が20%になっている。すぐに切れてしまいそうだ。ベルリンの駅で降りてからホテルまでの行き方を確認することに決め電源を切る。

さすが国際特急だけあって座席の下にはコンセントがある。私はコンバーター(変圧器)とヨーロッパで使えるソケットも持っているが、残念ながらそれもスーツケースの中だ。

まだお腹はすいていなかった。食堂車に行って今晩ホテルで食べる夕飯を注文する。チキンとポテトの盛り合わせがあったので、それにパンをつけてもらいテイクアウト。ハッピーアワーとそれ以外の時間の値段が併記されている。ハッピーアワーの方がはるかに安い。列車に乗ったらすぐに買っておけば良かった。日本でもお馴染みになったハッピーアワーだが、酒を飲まない私には関係ないと思っていた。でも、こんなに安いとは! 通常料金を払う私にとってはすごく損したようで、ハッピーな気分にはなられない。

列車は15分遅れてベルリン中央駅に着いた。iPhoneで確認すると、歩いて20分となっている。私が歩いたら30分かかるだろう。仕方なしにタクシーに乗ることにした。

10分足らずでホテルに到着。チップ込みで10ユーロ。また無駄遣いしてしまった。午後9時半。このホテルはベルリンの街のどのあたりにあるのだろうか? この街が東西に分かれていた時には、どちら側にあったのだろうか? 

そんな歴史に翻弄された街のホテルで、私は睡眠もとらず、すぐにブログを書き始めた。