旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

日本のYMCAのsound(サウンド)はsound(健全)

5月に入ってからも、退職とクルーズ両方の後始末でてんてこ舞い。だがうれしいことに、これからの仕事の打ち合わせも。

51日(月)、サムソナイトに電話。クルーズで壊れたスーツケースの見積もりを頼む。添付ファイルで届いた書類に必要事項を書き込んで、スーツケースに入れて送ってほしいとのこと。明日、宅配便が取りに来るという。

連休後半の3日~6日は完全休養。まだ時差ボケが取れない。昼も夜もひたすら眠る。これからは眠いのに無理して頑張ることはやらなくてもよくなるのだろうか?

57日(月)、ハローワークへ。61日に来て、講習を受けることになった。自分のやりたい仕事には「編集」「翻訳(英⇔日)」と書くが、フルタイムではなく時間給のアルバイト。自分が望む時給を記入するようになっているが、昔はA4のペーパー1枚の英文レターを代理店に頼むと6,0008,000円もしたものだ。私のできる仕事は、時間でははかれないのではないか? A4の英文レターなら30分で書けるから、時給は12,00016,000円か? だいたい仕事を時給で考えること自体がおかしい。

8日(火)午後1時、京王プラザホテルで小林さんと打ち合わせを兼ねて昼食。10年前からずっと書きたい本があったという。小林さんだから絶対におもしろい原稿を書いていただけると思うが、その前に出版社に話を持ち込んで企画を通してもらわなければならない。むしろそっちの方が、はるかに大変だ。

その後、ホテル近くの東郷青児美術館で「ターナー展」を見る。今度の夏にスコットランド湖水地方をドライブする予定なので、オーディオガイドを聞きながら絵が描かれた場所と地図とをじっくり照合。ぜひ訪ねてみたい。そんなことで全部見終わるのに3時間以上かかってしまった。

午後6時、渋谷駅のハチ公前で頴川さん、岸さん、大亀さんと待ち合わせ。頴川さんが10年間かかって書き上げた辞書の原稿が完成し、お祝いの会を天空の月で。たったひとりで3000枚の原稿を執筆。凄い! これから出版社に売り込みをすると言う。ぜひとも実現してほしい。

10日(木)、昼に渋谷のイタリアン「クッチーナ」。書籍セクションの向坂、大場、日下、倉園君と打ち合わせを兼ねた昼食。「これからは仕事を受ける立場なので、どんなことでもやらせてもらう」と話す。大場君からは「企画はどうですか?」と聞かれ「まずは岸見先生と会って話をしてみる」と応える。クッチーナのコスルさんから「退職お疲れ様でした」と書いたデザートをいただく。コスルさんは私のブログを毎回読んでくれていたし、私の本の良き理解者だった(私の本は、わかる人にはおもしろく読んでもらえるけれど、わからない人にはまったくおもしろさがわかってもらえない)。本当にこれまでいろいろお世話になった。いつか何かの形でお礼をしなければ・・・。

11日(金)昼に新宿御苑近くのベスト・ワン・クルーズに田渕さんを訪ねる。私が経験したフォートローダール~バルセロナの大西洋横断クルーズは、日本人で乗った人が少ないので、話を聞かせてほしいと言われたため。船の上は完全に英語の世界で英語ができないと難しいこと、システムも思考もアメリカ式なので慣れていないと船内生活は大変なことなどを1時間ほど話す。田渕さんは一生懸命にメモを取っている。

スーツケースの車輪が欠けたことも、本当はこのベスト・ワン・クルーズで船会社に掛け合い、損害賠償金を請求してもらうのが筋かもしれないが、個人的にとても興味があるし、本に書くネタも見つかるかもしれないので、自分でやってみると話す。

これまで何度もブログに書いたが、この話を再現する。乗船して最初の夜、スーツケースの車輪が欠けていることに気づいた。桟橋でポーターに渡し、船の私の部屋に運ばれるまでの10時間の間に壊れたことは間違いない。まず写真を撮って証拠を残す。翌日、ゲスト・サービス・カウンターに行って事情を話すと、「この書類に記入してほしい」とペーパーを渡される。「どんな損傷があるのか」「いつどこで壊れたのか」「損害賠償額はいくらか」・・・等を英語で記入する。翌日また30分並んで書類を提出。2日後、マネージャーの「確かに確認した」というサインが入った書類を返却してもらう。「日本に帰ったらでいいので、それを添付してメールを送ってほしい」とのこと。

日本に帰ってから、ああだ、こうだ言っても通用するようなアメリカの会社ではない。日本人の旅行者の中には自分で何もやらないで、帰って来てから、旅行会社にあれこれ苦情を言うような人もいるのかもしれない。でも、その損傷が確かに船で起こったという証拠や、責任者が確かにそのクレイムを船上で確認したという文書を残しておかないと、旅行会社では何もできない。

このベスト・ワン・クルーズはネット上の「口コミ」では本当に評判が悪いのだが、そのほとんどが手取り足取り面倒を見てくれることに慣れている日本人旅行者の感覚と、海外の厳格な契約社会との「齟齬」(今年の流行語大賞は「忖度」と「齟齬」か?)から生じているものに違いない。その2つの常識の間で、日夜苦労しているのがベスト・ワン・クルーズなのだ。私が今回経験してわかったのは、口コミに書かかかれているような、そんな非常識でいい加減な会社では決してないということだ。

その日の夕方、NHK国際放送の韓国語アナウンサーの李さんと久しぶりに会ってお茶を飲む。韓国から戻ったばかりだと言う。恐らく韓国と北朝鮮の南北首脳会談の取材だろう。「金正恩がさかんに中国を訪問しているには理由があるんです」と言う。驚いたことに1953年の朝鮮戦争休戦協定には国連軍・中国・北朝鮮は署名したものの、韓国は署名していなかったのだそうだ。当時の韓国の首相・李承晩があくまでも戦うことを主張したとか、国連軍から軽く扱われたからだなどとも言われているが、大義名分としては「南北の分断を固定してはいけない」との考えがあったかららしい。

さんには、もう何年も前にイ・ヨンエさんのエッセイをつくる時に通訳として協力していただき大変お世話になった。彼の通訳の域を超えた交渉力でこの本は実現した。

12日(日)、大西洋クルーズで仲良くなった人はたくさんいたが、その中でもKaren & Bob夫妻とマデイラ島のツアーで親しくなったDallas、レストラン「ダヴィンチ」で一緒のテーブルになったTedSallyにも住所を教えてほしいとメールを送る。みんな、私の書いた「世にもおもしろい英語」と「アダムのリンゴ」の話をすると「英語版はないのか?」と聞く。「残念ながら日本語だけだ」と言うと、それでもいいので買うから送ってもらえないかと言うので、贈ることにしたのだ。

14日(月)、渋谷の牛舎でライターの田渕髙志さんとお茶。「ブログを直近のものから『どくとるマンボウ航海記』のところまで読んだけれど、とてもおもしろい」と言ってくれる。

17日(木)、渋谷公園通りのガストで荒川・硲・小池君と昼食。久しぶり。いろいろ会社のことで話が弾む。スマホを見て、「西城秀樹が亡くなった」と荒川君。ショック! 我々の青春そのものだった。

19日(土)午後2時、柏アミュゼで「東葛出版懇話会」。柏や松戸、我孫子、流山、野田などに住む出版関係者の会だ。仕事が忙しかったこともあり10年ぶりの参加。池内紀先生の講演「ステキな町の見つけ方」。講演後、先生に「重くなって申し訳ありませんが・・・」と言って「アダムのリンゴ」をお渡しする。3時から5時まで近くの中華料理店で二次会。みんな団塊の世代。「西城秀樹は素晴らしい歌手だった」と話し合う。「リハビリ姿を公にしたことも、多くの人を勇気づけたに違いない」と。

23日(木)、日本プレスセンタービルの日本記者クラブで「内外メディア研究会」。昨日、日大のアメフトの選手の会見が行われたところだ。日本経済新聞経済部長・藤井一明さんの講演「経済報道の新たな挑戦」。やはりAIとネットの時代になり、記者のあり方、新聞編集の方法が変わってきていると言う。例えば、まったく新聞や世の中の動向に興味がないようなオタクの力も借り、適材適所に人材を当てはめて、総合的に新聞やデジタル版を編集する時代になっていると言う。

40年振りに持丸さんという著者と出会う。持丸さんも講演を聞きにきていた。NHKの科学産業部というセクションにいて大活躍されたディレクター・プロデュ―サーだ。

3時に上野の西洋美術館。「プラド美術館展」を見る。ベラスケスやフリューゲルの絵を満喫。イングランドのチャールズ1世時代に宮廷画家だったヴァン・ダイクの作品もあった。これは『アダムのリンゴ』にも書いたのだが、Vandyke beard というヒゲがある。顎の下の短く尖ったヒゲのことで、王の肖像画を当時流行のこのヒゲをたくわえた姿で描いたことに由来する。

24日(木)、Karen & BobTedからメールの返信があった。2人とも本にサインをしてほしいと言う。Karenは「あなたがバルセロナで降りた後も、いろんな人たちと同じテーブルでディナーを食べたけれど、あなた以上に話がおもしろい人はいなかった」と書いてくれた。Tedは奥さんと彼女の従妹夫婦と一緒に船に乗っていたのだが、「先日みんなで会って、船で知り合った印象深い人たちについて話をした時に、あなたの話が真っ先に出て来た」と書いてきた。日本ではそんなふうに言われたことがないので、ちょっと驚いてしまった。

彼らへのメールには、日本国内のローカルな話なんだけど「西城秀樹という偉大なシンガーが亡くなった」と書き、「あのヤンキー・スタジアムでグラウンド・キーパーがYMCAに合わせて踊るけど、あれは日本で振り付けたYMCAのダンスなんだ」と説明。「歌詞も日本語版では、とてもsimpleでhealthy(健康的)になった」と書いた後、In other words, this sound is very sound.と続けた。soundには音楽の「サウンド」という意味と「健全な」という形容詞の意味がある。「言い代えれば、このサウンドはとても健全なんだ」と言う意味。英語って、おもしろいでしょ?

525日(金)、郵便局からKarenBobに本を送る。Dallasは返事は来たものの「ファミリーネームを教えて」と聞いたのに、それに関する応えはなかった。なぜか? 彼のアドレス名がSeto Motoとなっていて、「これはどういう意味? ひょっとしたら日本語? 日本語ではpotteryのことをSeto Monoと言うんだよ」と教えてあげたら、そっちに注意を奪われたらしく「昔見たアニメの登場人物の名前だけどタイトルは忘れた」と返事が来た。一番重要な自分の苗字についてはまったく触れていなかったので、来週送ることにする。彼はひょっとしたらアニメオタク?