旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えました。いま世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆とともに、旅先ではこのブログを書いています。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

ヤンキース戦チケット、QRコードがNYに送れない?

627日(水)、渋谷センター街のイタリアン「Ventuno」。私がいた出版社の同僚のHくん夫妻と秋にハワイへ行くので、その打ち合わせ。「もう両親が歳なので、急に病気になって行けなくなったらどうしようか」という話になる。私も妻も、母親が高齢だったので、海外旅行に行く前にはいつも心配になった。直前で行けなくなるとキャンセル料が発生し、まるまる損することになるし・・・。そんな時のために「旅行キャンセル保険」ができたという話をする。通常の保険にほんの数百円上乗せするだけで、キャンセル料が補償されるのだ。

保険会社のネットでも調べてみたのだが、ホームページには「旅行に行きたくても、親が危篤になったり、家族が急病になったりする心配があるために、最初から諦めている人が意外と多いのが実情です。この旅行キャンセル保険がそんな需要を掘り起こし、集客力を増すことができ、ビジネスチャンスも広がります」と書いてあった。

世の中には、人々がいろいろなことをしたいと思っても、制約や不安があって諦めてしまっていることも多い。会社がアイディアを出して新たな制度やシステムを作ったり、国が法律を変えたり省庁が規制を緩めることによって、人々がものすごく活発にいろんなことができるようになることも多いのではないか? しいては、それが経済の拡大につながる可能性もある。

私の妻も一緒にハワイに行くことになっているのだが、2日後の29日にイギリスに行き、2か月にわたって英語学校に通う予定なので、その支度で忙しい・・・というより、76日(金)にアメリカから娘の家族が来るので、そっちの準備の方が大変のようだ。

娘の家族は、昨年10月に妻の母親が98歳で亡くなり、その葬儀で来日したのだが、その時に「孫2人の七五三もやりたい」と言っていた。だが、喪が明けないと神社に入ってはいけないとのことで諦めたのだった。

先日、神社に確認てみると「秋の七五三シーズンでなくても結構です」と言う。衣装合わせや写真撮影の予約などは全て私がやった。娘の夫はアメリカ人で、紋付き袴も着るつもりでいたのだが3万円かかると言うことで諦め、スーツを持ってくることにした。私も子供の七五三の時はスーツだったし、まず第一に主役は子供なのだから・・・。ただ娘は祖母が遺してくれた着物を着る予定。

それから子供たちの日本のパスポートも取りたいと言う。もう、続々と日本にいる友達に会ったりする予定も入っているようで、七五三や軽井沢旅行、パスポート申請と受取をどのようにスケジューリングするかで頭を悩ませている。

28日(木)は、家の中の片づけ。とりあえず必要ない冬に使うものを近くに借りているレンタル倉庫に運ぶ。

29日(金)、妻を成田空港に送っていく。8月中旬に私もイギリスに行って合流しスコットランドを一緒にドライブして、日本への帰途バンコクで友人のイギリス人Brian Powleさんに会う予定なのでタイ航空にした。そのおかげで、私の飛行機も真夏だというのに成田・ヒースロー間が13万円だった。

午後4時半、妻はゲート入口を入っていく。考えてみればもう十数年前、娘がアメリカに留学する時も、ここで別れた。その時が、まさに娘の人生を大きくダイナミックなものに変えた瞬間だったのだと思い、感慨深かった。妻はいま64歳だが、彼女の人生も大きく変わるのだろうか? いまから・・・?

妻の飛行機が飛び立つまでデッキのベンチに座り約1時間半待つ。梅雨が明けて真っ青な夏空。太陽の光が肌に当たってジリジリと焼けるようだったが、強い風が吹いていたので、体も心も爽やかだった。6時、タイ航空のジャンボ機がデッキの前を通って滑走路に向かう。それから20分後、機体はとても重そうにゆっくりと滑走路を走り、やっとのことで陸を離れた。飛行機が空に消えるのを見届けると、ターミナルの五右衛門でひとりパスタを食べ、10時近くに家に着いた。

30日(土)、もうひとりの元同僚のKくんが、いまアメリカ東部を旅行している。彼は71日(日)にNYに行きヤンキー・スタジアムでレッドソックス戦を観戦することになっている。私が自分のパソコンで、Kくんの代わりにチケットをネットで購入した(妻は「あなたは日本国内のことは何もできないのに、海外のことになるとすいすいできるのね」と不思議そうに言う)。試合が始まる48時間前までにQRコードが送られてくることになっている。それを彼に転送にしなければならない。

朝起きると、私のiPhoneにメールが来ていた。その英文のClick HereとなっているところをクリックするとQRコードが出てくるのだろうが、一度それをやってしまうと、NYにいる彼の方で再度QRコードを出すことができなくなるかもしれないと思い、そのまま転送した。

彼にラインで確認してみると、私からのメールは届いていないと言う。やっぱり転売を防止するために、ネット購入した本人にしか見られないようになっていて、転送できない仕組みになっているのだろうか?

しかたなく、私のiPhoneの画面にQRコードを出して、それを写真に撮ってLINEで送るという方法を考えた。Click Hereというところをクリックすると、アドレスやパスワードを入力する画面が出てきた。入力してみると、ちゃんとQRコードが出てくる。これでひと安心。これを写真に撮って彼に送り、それを球場の入口でスキャンしてもらえれば入場できるはずだ。写真に撮ってもQRコードはQRコードだ。

ところが、妻もイギリスに行ってしまったので、私のiPhoneの画面を撮影する人がいない。そこで次に考えたのが、QRコードを私のパソコン画面に表示し、それをiPhoneで撮影するという方法だった。しかし何度やっても「デスクトップでは表示できません」となってしまう。iPhoneを球場に持っていって、入場ゲートでQRコードを提示するという前提でチケットのネット販売をしているらしい。その後、いろんな方法を考えてはトライしてみたのだが、どれもうまくいかなかった。これでは、彼の払った観戦料を弁償しなければいけないな・・・と心配になってきた。

ヤンキースから来たメールは本当に転送できないのだろうかと思い、私の自宅のアドレスに転送するとちゃんと送られる。CCKくんにも送ってある。LINEKくんに電話すると、やはり「届いていない」と言う。「おかしいな。家のパソコンには転送できるんだけど・・・」と言って、再度空メールを送ると、

しばらくしてKくんから電話があった。「いま大量にメールが届きました」と言う。登録してあるアドレスとパスワードを言うと、「あっ、いまQRコードが出ました」と言うので、ホッと胸をなでおろした。

彼の話では「アメリカで定額パケットに入ったのだが、それは1日ごとに更新が必要なものだった。だが、その更新を忘れていた」とのことだった。でも、だったらなぜLINEOKなのだろうか? よくわからない。

Kくんはとても恐縮して、平謝りに謝っている。でも、私だってKくんには日頃本当に世話になっているし、いろいろ助けてもらっている。そんな気にしなくてもいいのに・・・。

すったもんだがあったが、とくかくKくんはこれで念願だった本場の野球の試合をヤンキー・スタジアムで見ることができる。田中マー君故障者リストに入っていて出場しないのは残念だが、メジャーリーグの試合の雰囲気を大いに味わって来てほしい(そうだ! セブンイニング・ストレッチで歌うTake me to the ball park私を野球に連れてって」を教えるのを忘れていた)。試合は夜805分から。日本時間だと月曜日の午前9時。えっ、ほんと? 

71日(日)、朝9時から「ウィンチェスター・ハウス」を見ようと思い早起きする。だが、やはりいつものように支度が遅くなり断念。そこでジムに行くことに変更する。ところがジムに行くと駐車場が満車で車が10台も待っている。朝9時半、ジムが開いてからまだ30分きり経っていない。しかたなく行き先を柏アリオに変更。9時半からの「焼肉ドラゴン」はもう始まってしまったが、次の12時台の回は見られるはずだ。まだ10時前なので駐車場に車を止められるだろう。映画が始まる前に本を読もう。何冊か本もリックに入っている。

16号に出て車を走らせていると、なぜ真っ先にジムに行こうと思ったのかを思い出した。ジムでウェイトをやった後、風呂に入ろうと思っていたのだ。2つ先の信号を左に曲がれば、手賀沼大橋のたもとに「満天の湯」という温泉がある。再度行き先を変更。ジムで使おうと思っていたタオルも持っている。

お湯にゆっくり1時間ほど浸かる。その後マッサージ、40分コース。背中がものすごい硬さでパンパンになっているという。そういえば最後に温泉に入りマッサージを受けたのは、もう半年も前のことだった。定年後の生活も忙しいが、せめて1週間おき程度には温泉に来てマッサージを受けたいものだ。

何とカードのポイントが平成20年からたまっていて、4000円が半額の2000円になると言う。平成20年と言えば、10年も前だ。この温泉のマッサージ店のカードは、ポイントに期限がなく途中で消えることがないと言う。よくそのカードを10年も持っていたものだ。自分で自分を褒めてあげたい!

その頃、私は何をしていて、どんなことを考えていたのだろう?

定年したのに、なぜこんなに忙しいのか?

623日(金)、内外メディア研究会の例会で日本記者クラブに。週刊新潮の元編集長の講演。質問も含め2時間。その後、二次会。喫茶で講演を聞きにきた人たち数人とお茶を飲む。私が2か月前に定年退職し、最後の有給休暇を使って大西洋横断のクルーズ船の旅をしてきたことを話すと、みなさん興味を持ってくれる。私の名刺には、著書の「世にもおもしろい英語」「アダムのリンゴ」も印刷してあるので、それについてもいろいろ聞かれる。みなさん、私の話を「とてもおもしろい」と言ってくれて、「講演でもあれば聞きに行きたい」と言ってくれる人もいた。

夕方に、4月末まで勤めていた会社に行き、荒川君と小池君と夕飯。久しぶりのゴールド・ラッシュ。小池君は今度アメリ東海岸に旅行に行くので、いろいろアドバイス。普段、何に気なしにアメリカに行っているので、どのようなことが彼の役に立つ情報なのかわからなくなっている。

623日(土)、4月末まで勤めていた出版社の「OB会」の会報の原稿を頼まれていたので、それを執筆。私の本のこと、2冊目を編集している時に起こった「不思議な出来事」について。2冊の書影もスキャンして送信する。編集人の藤橋くんは気に入ってくれるだろうか?

624日(日)、映画「終わった人」を観るため車でショッピング・モール「柏アリオ」に。オープンが10時なのだが、映画が始まるのが930分。車もTOHOシネマに近い駐車場の端の方に留めたのだが、近くの入口から入ろうと思っても閉まっている。しかたなく中央の入口まで走り、そこから建物に入るが、1階から3階までさまよったものの、どこもシャッターが閉まっていて映画館にたどり着くことができない。

柏アリオの代表番号に電話をすると、一度外に出て先ほど最初に入ろうとした入口よりさらに遠くの入口から入らなければいけないということがわかった。走っていったが、もう映画が始まってから15分も過ぎてしまったので、930分の回はあきらめざるをえなかった。何のために朝早く起きたんだ! 仕方なしに、次の1210分の回を観ることにした。

でも、事前にチケットを買っていったら、払い戻しをしてくれたのだろうか? ネット購入の際の注意事項には「いかなる事情があっても払い戻しはできない」とある。だが払い戻しではなく「次の回を見る」ということなので、もしマネージャーが柔軟な対応のできる人ならOKしてくれたかもしれない。何しろ、映画館が入っているショッピング・モールには20分も前の上映開始時間前に着いていたのだから。

まだ2時間もある。トイレの近くの椅子で本を読んでいると、アッという間に1130分になってしまった。少しでもいいので何かお腹にためなければ、2時まで空腹の状態で映画を観ることになる。それでは映画に集中できない。

フードコートに行ってみると、ものすごい混みようだった。あの広大なフードコートが満席になっていて、空いているテーブルがひとつもない。だが、時間もあまりない。一番簡単で早い「板蕎麦」を食べることにする。注文すると板蕎麦はすぐに出てきたのだが、何と空いている席がない。私は蕎麦とつけ汁を載せたお盆を持ったまま、カウンター席の後ろに立ち尽くして、そろそろ食べ終わりそうな人の後ろでジリジリしながら待つ。映画もすぐに始まってしまう。今度はチケットは買ってしまったので、見逃すことができない。

父親と娘だと思うが、すでに食べ終わった人がいた。その後ろで待つが、なかなか席を立たない。もうひとりのお母さんが、まだ半分も食べていなかったのだ。待つこと10分、やっと別の人がお盆を持ってひとり立ち尽くしている私に気づいてくれて、席を譲ってくれた。大急ぎで蕎麦をかき込み、映画館へ。もう予告編が始まっていた。

内館牧夫さん原作の映画「終わった人」。全く観る気がなかったのだが、定年を迎えた人が普通はどんな感じなのか知りたいという興味で観ることにした。映画の冒頭は、かなりステレオタイプな滑り出しだった。何もすることがないので、時がゆっくり流れる。テレビを見ていても面白くない。手持無沙汰で何をしたらいいのかわからない。時間は午前11時、主人公の舘ひろしは「まだこんな時間なのか」とつぶやく。暇を持て余していて、どうしようもないのだ。

それを見ながら、2か月前に定年になった私には「暇を持て余し、何をして時間をつぶしたらいいのかわからない」という状態になったことが一度もないことに気がついた。2か月間、本当に忙しく行きつく暇もなく動き回ってきた。

先週の金曜も、あと1か月で定年を迎える荒川君に「本当に忙しいよ。これまで朝晩の通勤を含めて毎日10時間会社に捧げてきた。それが全て自由に使えると思ったけれど、意外といろんなことができないんだ」という話をした。

私の場合は、本や雑誌記事も書いているし、このブログも書いている。読みたい本もたくさんある。暇だから本を買ってきて、積んだままにしているわけでない。本当に今すぐにでも本気になって読みたいのだ。テレビもすぐにでも見たい番組の録画が3年分たまっている。映画も週に3本は見たい。英会話も4月の2週間の船旅では、たくさんのアメリカやカナダの人たちと英語で話したが、日本に戻ってからも一生懸命トレーニングしないと、すぐに喋れなくなってしまうし、リスニング力もなまってしまう。1日に1時間半は英語に費やしたい。

ジムには週2回、手賀沼周辺のウォーキングも週に1度はしないと、じきに歩けなくなってしまいそうだ。上野や乃木坂の美術館にも行きたい。忙しいので、シャワーも1日おきに浴びている(時間節約のために風呂には入らない)。執筆の関係で肩がものすごく凝るのだが、近くの温泉に行って、お湯にゆっくり浸かってからマッサージもしたいのに、なかなか行けない。それにもっと旅行もしたい。

定年になってから、嫌なことは絶対にやらないことにしようと誓ったが、やりたいことが多すぎるのになかなかできない。だから、たまにパニックなる。仕事でパニックなったことは、それほどないのに。

本当にやりたいこと、ひとつひとつを確実に堅実にやって行くしなかない。本当に「終わった人」とは対照的な日々を過ごしている。

書店で買ったイギリスの地図。送料が上乗せされていて倍に

6月20日(水)、午後1時半に柏キネマ旬報シアターで「男と女 モントーク岬で」を観る。あまりおもしろくなかった。主人公の男性が小説家だったので、深みのあるストーリーを期待したのだが。

東京駅の丸善日本橋の店がなくなり、ここが本店になったらしい)に行き、ミッシェランのスコットランドのドライブマップを買う。1600円+。消費税

5時半にNHK文化センター。正木さん、語学担当の加瀬さんと打ち合わせ。

21日(木)、昨日買ったスコットランドの地図では、最後に行く湖水地方ウィンダミアのちょっと上で切れてしまうので、アマゾンで同じシリーズのNorthern Englandを注文。なんと800円。書店で買うと、送料だけで800円上乗せされていた。何と倍だ。

でも実際に地図を開いて見てみないと、どのくらい見やすいものががよくわからない。昨日、丸善で中身を見たことは無駄なことではなかった。

そういえば柏駅前の浅野書店が5月20日で閉店になった。大正時代から続ていた古い店。店長の藤田さんには本当にお世話になった。その藤田さんが言っていた。「書店で実際に本を見て、アマゾンで注文する人がいる」と。

私は、英語関連の本を書くので、英語の原書の古本をアマゾンで大量に購入している。イギリスとかアメリカ、アイルランドなどから1週間かかって届く。いつも中身を見ないで買うので、どの程度のレベルのものかわからない。「なんだこれは!」とガッカリすることも多い。Reviewも投稿する人の英語知識もそれぞれに違うので、あまり当てにならない。

岡村孝子のコンサート。大好きな「Adieu」を聞きたかった

午後1時に越谷レークタウンで弁護士のIさんと会い、食事とお茶。何年振りだろうか? 私の『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』を読んでくれ、「こんなに知的欲求を満足させてくれる本を読んだのは久しぶり」というメールをいただいていた。この本は、わかる人には面白さがわかってもらえるが、わからない人にはまったくわかってもらえない。

Iさんは弁護士、物事を事実と法律で判断する仕事だ。そこには曖昧さとか感性などが入り込む余地があまりない。私の仕事は編集者、物事をきちんきちんと理論で判断するのではなく、世の中の曖昧さや不条理にスポットを当てて、そこにある面白さを掘り出す仕事だ。ある程度のいい加減さを余地として残しておかなければならない。

Iさんはバランス感覚もあり、弁護士としては人の心の機微まで考えが及ぶ人だ。だから対照的な仕事の弁護士と編集者でも話が合い、意気投合して3時間近くも話し込んでしまった。

Iさんと340分頃に別れ、レークタウンから武蔵野線新八柱に。松戸・森のホール21岡村孝子のコンサート。駅から歩いて20分、ちょうど開場の30分前に着く。コンサート前の雰囲気もゆっくり味わえてよかった。あまりギリギリでもせわしないし、早く行き過ぎても退屈してしまう。

6時開演。いつも聞いているCDではバックの演奏が控えめで、岡村孝子の素直で優しく繊細な歌声が全面的に前に出てきてすごくリラックスできるのだが、コンサートではドラムもありバックの演奏が彼女の歌声を食ってしまっている感じがする。やはりこれだけの超満員の観客の前では、彼女もバックの演奏家も張り切ってしまうのかも。わたしはもっと、彼女らしいまったりとした歌を聞きたかったのだが・・・。

でも、岡村孝子というシンガーが目の前で歌っているということよりも、あの名曲を作詞作曲した天才が目の前にいるということで、もう心から感動してしまった。岡村孝子は、いつも曲が先にできて、その後で詞をつけるのだと言う。曲は簡単にできるのだが、その曲に合わせて詞を書く時に七転八倒の苦しみを味わうと言う。

実は私は昔、作曲家になりたいと思っていた。曲は(多少の良し悪しはあっても)すぐに何曲でもつくることができる。今でも。しかし詞を書くことは私にはできない。きっと感性をつかさどる右脳は発達しているものの、理論をつかさどる左脳はかなり劣っているのだろうと若い頃は信じ込んでいた。でも、その私が編集者になって、今では本を書いているのだから、人間はわからないものだ。

コンサートでは、「ミストラル」「虹を追いかけて」だけでなく「無敵のキャリアガール」も生で聞くことができたし、何とあの「夢をあきらめないで」も歌ってくれた。

「夢をあきらめないで」は、野茂英雄に日本の球界を捨ててメジャーリーグに行く決意をさせた歌だ。野茂以降、日本人も普通にどんどんメジャーに挑戦するようになった。歌はすごい、人ひとりの人生だけでなく、日本の野球界も変えてしまったのだから。

この歌で私が一番好きな箇所は「苦しいことにつまづく時も/きっと上手に越えていける」というところだが、岡村孝子は「きっと上手に生きていける」と歌っていた・・・ように私には聞こえた。これは私の想像だが、この歌詞をつくる時から「生きていける」にしようか「越えていける」にしようか迷っていたのではないか? その迷いが今も続いているのか、あるいはその時の気分で変えているのか? まあ、つくった本人だから、自由に変えてもいいのではないかと思う。

これで後は「Adieu」を歌ってくれれば、もう言うことはないと思っていた。

アンコールでは3曲歌ってくれたが、あと最後の1曲を残すばかりとなった時に、会場から「Adieuを歌って!」という声が飛んだ。私と同じことを考えていた人が他にもいたのだ。岡村孝子は、あわてたように「すみません。今回は用意してないんです。次のクリスマスコンサートまでの宿題にさせてください」と言った。

私はあの「Adieu」の「忘れないでね/二人で生きたキラキラ輝く季節を/いつの日か素敵な誰かと出会っても」という詞と、その箇所のメロディが大好きだ。

野次を飛ばした人にも、きっと「キラキラ輝く季節」があったのだろう。

韓国映画「タクシー運転者」も凄いぞ!

612日、935分から韓国映画「タクシー運転手」を観る。これもすごい映画だった。毎日こんなレベルの高い映画ばかりみていると、感覚がおかしくなりそう。

広州事件についてはニュース映像を見たりして、ある程度知ってるつもりだったが、韓国の他の地域とは隔絶して陸の孤島と化し、報道も軍部の発表だけに制限されていた。実際にあったことかわからないが、この映画の中では、1面が新聞名だけが印刷されていて、他は真っ白の広州の新聞が出てきた。検閲があったからだ。東京の記者クラブのシーンでは、テレビから流れる事件のニュースの日本語がちょっと不自然だったことが気になった。

街が戦争状態に。軍隊が市民に発砲し(実弾か麻酔銃かはわからないが)、棍棒で滅多打ちにする。広州の年輩の人たちの中には、映画を観て、実際はこんなものじゃなかった、もっと激しかったと言っている人もいるという。

私の親友の韓国人も広州の出身。恐らく彼はこの時小学生か中学生くらいだったのではないか? 彼はいま大学教授でメディア論の専門家となっている。この光州事件が彼の人生に影響を与えているのかも。

映画の後、ジムへ。水中歩行を20分、その後100m泳ぎ、すぐに電車で上野へ。上野の美術館で「エッシャー展」を観る。友人が無料鑑賞券を持っていて誘ってくれた。トリックアートだけをやっていた人かと思ったが、版画家としても高名だったことがわかった。版画家としての芸術を昇華させていくうちにトリックアートにたどり着いたことがわかる。

その後、上野の料理屋で酒を飲む。私も梅酒でお付き合い。楽しい。

家に帰って、米朝首脳会談の報道を見る。シンガポール宣言は踏み込みは足らないが、とにかくトランプと金正恩が会って話をした。それが交渉の第一歩という論調。アメリカが「現政権の維持を認めた」というが、北朝鮮の人々が、豊かで自由な外の国々のことを知るようになり、これまで為政者のためにいかにひどい目にあってきたかがわかると、金正恩批判が巻き起こり、‟人民裁判“のようなことが起こらないのだろうか? 金正恩は最悪の場合を考えて、「中国かアメリカへの亡命」についても確約を得ているのかもしれない・・・などとまで、私は考えてしまう。

念のため「万引き家族」も観たが、私はやはり「羊と鋼の森」に軍配

朝から雨。午前中に車でジムに行ったのだが、すでに駐車場が満車で入口のバーの前に5台の車が並んでいた。ウィークデイ(月曜日)で、しかも午前1030分。私もそうだが、こんな時間にジムに来るなんて、世の中には何と暇人が多いのだろうか! 仕方なしにジムを諦め、妻にショッピングセンター「柏アリオ」まで車で送ってもらい、映画を観ることにする(妻は午後に車を使うので)。

12時から「万引き家族」。この映画を観ずに、ブログには「『羊と鋼の森』が日本アカデミー賞確実」なとど書いてしまったので、責任を感じて実際に観ることにした。どういう訳か子供で一杯。昨日運動会か何かがあって小中学校は休みなのだろうか? 「クレヨンしんちゃん」はもう満席。

万引き家族」も、もうほとんど空いている席はなかったが、どうにか一番端の前の方の席を確保した。この映画を「羊と鋼の森」と比較するのは難しい。たとえてみれば、メジャーリーグの大谷とサッカーの本田とどっちが凄い選手か比べるようなものだ。

でも、私は個人的には「羊と鋼の森」に軍配を上げたい。「万引き家族」はカンヌで最高賞「パルムドール」を受賞したばかり。テレビでも大々的に報道されていたので、前評判が高い。これに比べて「羊と鋼の森」の混み具合を券売機でチェックしてみたのだが、相変わらずガラガラ。原作本も100万部売れているはずなのに、その読者たちは一体何をしているのだろうか?

映画が終わってから、妻が用事を済ませて迎えに来るまでの2時間30分、フードコートの王将でラーメンを食べ、カフェ2か所でコーヒーを飲みながら読書。同時に、次の本の方向性を紙にメモる。書きたい内容は頭の中にたくさん入っているのに、それらの断片をどのようにうまく整理して、どの章に分散して、どのような構成で書き進めていくかで、かなり行き詰っている。

家の書斎よりも、カフェのようなパブリックなオープン・スペースの方が気持ちが広がり、発想が自由になるような気がする。

宮藤官九郎もいつもファミレスで書いていると言う。これから私もそうしようか?

「羊と鋼の森」はもう日本アカデミー賞でしょ! ライバルは「万引き家族」か?

昨日は、フニックス・ワインクラブのパーティがあり椿山荘へ。私のテーブルは「C」で、そこには編集者やイラストレーターが集められていた。

私は酒が飲めないのだが、妻と一緒にフランス料理、そしていろんな人と知り合えることを楽しみに参加した。隣の席には静山社のYさん。会うのは何年振りだろうか? ピアノを教えているという奥様も一緒だった。奥様に「もうすぐ『羊と鋼の森』の映画が始まりますね」と話を向けると、「今日から封切なんです。父が調律師だったので、とても興味があるんです」と言う。私が「原作を読んで本当に感動したので、絶対に見ようと思ってます」と言うと、「私はいま本で最後のこところを読んでます」とのことだった。

私の前には注がれたままのワインが5種類そのまま残ってしまったが、みなさん「最初の白ワインと最後の赤が特においしかった」と言っている。それぞれのワインをちょっと舐めただけの私だったが、その味覚がわかるような気がした。

さっそく今日、「羊と鋼の森」を見に行く。あの原作を映画にするのはとても大変なことだっただろう。原作の絶妙な感覚を映像でどんなふうに表現しているのだろうかと半分心配でもあり、半分期待していたのだが、素晴らしい映画に仕上がっていた。主演の山崎賢人は時折嵐の櫻井翔くんのようにも見えたが、揺れ動く繊細な気持ちをよく表現していた。三浦友和も強い存在感を示していたし、鈴木亮平も「西郷どん」よりこちらで注目されて助演男優賞を獲得できるかも。上白石萌音と萌歌の姉妹も言うことなし。これはもう日本アカデミー賞でしょう。ライバルは「万引き家族」か?

1220分からの上映だったが劇場はガラガラ。こんなすごい映画をなぜみんな見に来ないんだ! 何年か前に、あの「おくりびと」を封切の時に見た時も劇場にはまったく観客がいなかった。そのうちに口コミで評判が伝わり、1年後には再封切され連日満員となった。

なにかそんな予感を感じさせる最高の映画。