旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

岡村孝子のコンサート。大好きな「Adieu」を聞きたかった

午後1時に越谷レークタウンで弁護士のIさんと会い、食事とお茶。何年振りだろうか? 私の『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』を読んでくれ、「こんなに知的欲求を満足させてくれる本を読んだのは久しぶり」というメールをいただいていた。この本は、わかる人には面白さがわかってもらえるが、わからない人にはまったくわかってもらえない。

Iさんは弁護士、物事を事実と法律で判断する仕事だ。そこには曖昧さとか感性などが入り込む余地があまりない。私の仕事は編集者、物事をきちんきちんと理論で判断するのではなく、世の中の曖昧さや不条理にスポットを当てて、そこにある面白さを掘り出す仕事だ。ある程度のいい加減さを余地として残しておかなければならない。

Iさんはバランス感覚もあり、弁護士としては人の心の機微まで考えが及ぶ人だ。だから対照的な仕事の弁護士と編集者でも話が合い、意気投合して3時間近くも話し込んでしまった。

Iさんと340分頃に別れ、レークタウンから武蔵野線新八柱に。松戸・森のホール21岡村孝子のコンサート。駅から歩いて20分、ちょうど開場の30分前に着く。コンサート前の雰囲気もゆっくり味わえてよかった。あまりギリギリでもせわしないし、早く行き過ぎても退屈してしまう。

6時開演。いつも聞いているCDではバックの演奏が控えめで、岡村孝子の素直で優しく繊細な歌声が全面的に前に出てきてすごくリラックスできるのだが、コンサートではドラムもありバックの演奏が彼女の歌声を食ってしまっている感じがする。やはりこれだけの超満員の観客の前では、彼女もバックの演奏家も張り切ってしまうのかも。わたしはもっと、彼女らしいまったりとした歌を聞きたかったのだが・・・。

でも、岡村孝子というシンガーが目の前で歌っているということよりも、あの名曲を作詞作曲した天才が目の前にいるということで、もう心から感動してしまった。岡村孝子は、いつも曲が先にできて、その後で詞をつけるのだと言う。曲は簡単にできるのだが、その曲に合わせて詞を書く時に七転八倒の苦しみを味わうと言う。

実は私は昔、作曲家になりたいと思っていた。曲は(多少の良し悪しはあっても)すぐに何曲でもつくることができる。今でも。しかし詞を書くことは私にはできない。きっと感性をつかさどる右脳は発達しているものの、理論をつかさどる左脳はかなり劣っているのだろうと若い頃は信じ込んでいた。でも、その私が編集者になって、今では本を書いているのだから、人間はわからないものだ。

コンサートでは、「ミストラル」「虹を追いかけて」だけでなく「無敵のキャリアガール」も生で聞くことができたし、何とあの「夢をあきらめないで」も歌ってくれた。

「夢をあきらめないで」は、野茂英雄に日本の球界を捨ててメジャーリーグに行く決意をさせた歌だ。野茂以降、日本人も普通にどんどんメジャーに挑戦するようになった。歌はすごい、人ひとりの人生だけでなく、日本の野球界も変えてしまったのだから。

この歌で私が一番好きな箇所は「苦しいことにつまづく時も/きっと上手に越えていける」というところだが、岡村孝子は「きっと上手に生きていける」と歌っていた・・・ように私には聞こえた。これは私の想像だが、この歌詞をつくる時から「生きていける」にしようか「越えていける」にしようか迷っていたのではないか? その迷いが今も続いているのか、あるいはその時の気分で変えているのか? まあ、つくった本人だから、自由に変えてもいいのではないかと思う。

これで後は「Adieu」を歌ってくれれば、もう言うことはないと思っていた。

アンコールでは3曲歌ってくれたが、あと最後の1曲を残すばかりとなった時に、会場から「Adieuを歌って!」という声が飛んだ。私と同じことを考えていた人が他にもいたのだ。岡村孝子は、あわてたように「すみません。今回は用意してないんです。次のクリスマスコンサートまでの宿題にさせてください」と言った。

私はあの「Adieu」の「忘れないでね/二人で生きたキラキラ輝く季節を/いつの日か素敵な誰かと出会っても」という詞と、その箇所のメロディが大好きだ。

野次を飛ばした人にも、きっと「キラキラ輝く季節」があったのだろう。