旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えました。いま世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆とともに、旅先ではこのブログを書いています。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

マジョルカ島の鉄道とオリーブオイル

4月15日、船はマジョルカ島パルマに着いた。朝9時に起きて支度をし、15階のビュッフェで朝食を食べていたら11時になってしまった。午後2時にはバスに乗って駅に行き、ミニ鉄道で島の真ん中の方にあるSollerという町に行くツアーに参加するので、3時間後にはまた船に戻って来なければならない(桟橋からターミナル前のタクシー乗り場まで歩いて25分から30分くらいかかることもあるので実質は2時間半後だ)。

いつも朝の行動開始が遅くて損ばかりしている。朝きちんと起きられてパッと支度ができたら、私の人生もずいぶん違ったものになっていただろうといつも思う。でも、これからは会社にも行かなくなるし、きちんと朝早く起きていろんなことができるように行動パターンを変えなければいけないと思うのだが、果たしてこの歳になってそんなことが可能なのだろうか?

午前中は、午後2時からのツアーの前に、タクシーに乗って名所を自分で回ることにする。桟橋からターミナルまで15分歩くと、やっとタクシー乗り場があった。山の上にあるエルベル城に行く。タクシーで15ユーロ、チップを2ユーロ払う。お城の入口を過ぎて、チケット売り場まで5分ほど歩くと窓口が閉まっている。隣のカフェで聞いたら「今日に日曜で無料だ」と言う。

この城からはパルマの市内が見下ろせる。円形の塔の上に昇ると、町や港だけでなく、恐らくオリーブの木だと思われる涼しげな感じの森が広がっている。ここはマジョルカ王の離宮だったところだが、中には博物館もある。この島で発見された大理石の像なども展示されていて、中にはカエサルの像もあった。「この島には紀元前123年にローマ人が移り住んだ」と言う。「その前には誰も住んでいなかった」と解説には書いてあった。ローマ時代より前の遺跡など、人が生活した痕跡が発見されていないからだ。今日は団体ではなく1人なので、じっくり時間をかけて解説が読める。これが自分本来の旅の仕方なのだと実感する。

でも、あまりゆっくりしてもいられない。今度は市街地に戻ってカテドラルを見に行こうとタクシースタンドに行くと、3台停まってはいるものの運転手がいない。そこに2人の中国系と思われる夫婦もやってきた。「クラウンプリンセスに乗っていらっしゃる方ですか?」と聞くと「そうだ」と言う。「私もです。午後2時からのツアーに参加するので、すぐに町のカテドラルを見て船に戻りたいんですが、運転手がいないんです」。

人を乗せたタクシーが、さっき閉まっていたチケット売り場の方からUターンして戻ってきた。そっちの方に行くと、すぐにタクシーが来て人を降ろした。「カテドラルまで行きたい」と言うと「OKだ」と言う。坂を降りて街中に入ると、大きな教会が見えて来た。スペインで2番目に大きな教会で、20世紀初めの改修にはガウディもかかわったのだと言う。教会に近づくと、車も混んできて渋滞になった。赤信号で停まっている時、運転手が「教会の前まで行こうと思ったけれど、ここで降りて歩いて行った方が早い」と言う。メーターを見たら9ユーロ50セントだったので、10ドルユーロを渡してタクシーを降りる。

パルマ市内観光の中心地らしく、ものすごくたくさんの人でにぎわっていた。時計を見ると午後1時。すぐに中を見て船に戻らなければ・・・。教会の隣にマジョルカ王の「アルムダイナ宮殿」もあり、聞いたら入場料が7ユーロだと言う。でも、ここを見ていたら、遅くなってツアーの集合時間に間に合わなくなるので入場を諦める。朝の支度が遅かったことを後悔する。仕方なしに、となりの教会に行く。入口の前に20mほどの列ができていたが、パリのノートルダムや郊外のシャルトルなど特に観光客が押し寄せるところ以外は、入場料を取るところはあまりないので、ただ中に入るための行列だろう。並んで3分ほどで入ることができた。広くてなかなか立派な教会だった。

120分になってしまった。教会の裏手の坂を降りるとタクシースタンドがあり、すぐにタクシーをつかまえることができた。港のターミナルまで12ユーロだった。運転手に20ドルを渡してから「お釣りを5ドルください」と言うと「ムーチャス・グラシアス」とお礼を言う。

早足でターミナルを歩き船の前の桟橋に戻る。135分。どうやらツアーに間に合ったようだ。

午前中のツアーはsold-outということだったので、この午後のツアーにしたのだが、今夜船は夜930分出発だったので、やはり先に午前中のツアーを終えてから、お城や教会をゆっくり廻ればよかった。そうすれば宮殿だって見学できたかもしれない。何事も早め早めに判断し行動することが必要だ。そうしていればサグラダファミリアも塔の上まで上がれたし、グエル公園にも入れた。

ツアーのバスは210分に出発し、市内を廻った後、電車の駅に着いた。そこで10分ほど待ってから、軌道の短い小さな「ビンテージトレイン」に乗る。黒部渓谷鉄道を思い出す。何日か前にも、金沢にクルーズ船が着くようになったということを書いたが、宇奈月からこの登山鉄道に乗るツアーなどもあるのだろうか? 外国の人はきっと大喜びするだろう。特に紅葉のシーズンは・・・。

電車は17マイルというから、約27キロを1時間ほどかけて走りSollerという町に着く。途中には黄色い(恐らくは)菜の花畑やオリーブの林もあり、どちらの匂いなのかはわからないが車内に良い香りが充満する。長いトンネルを抜けると、頂上に白い岩のある険しい山も見えてきた。谷の下を覗くとSollerの街並みも見える。駅に着いて町の中心の広場まで歩き、そこで20分休憩をする。カナダのトロントから来たという夫婦と一緒に広場の真ん中のオープンカフェに入り、また「ソモデナランハ」を注文する。「何を注文したのか」と聞かれOrange Juiceだと答える。集合時間になったので、お金を払おうとしたら、「いいよ、いいよ」と言うので、ありがたくご馳走になった。

オリーブ・オイルを伝統的な昔からの製法でつくっているという工場へ。まず工程の説明。地上に落ちたオリーブの実を拾い集めて、それを1トンもある三角錐の石の重しを転がして圧縮し液体にする。その上澄みの一番透明なところをすくって高級なオリーブ・オイルとして瓶詰すると言う。その後、小さな食堂に通され、パンとチーズ、ハムとオレンジジュースの夕食をとる。もちろんオリーブ・オイルはかけたい放題だ。ふと思ったのだが、日本でオリーブオイルをパンにつけて食べるようになったのは、いつ頃からだっただろうか?

もう5時半になっていた。いつも船のレストラン「ダヴィンチ」で同じテーブルを囲むみんなも「遅いなあ。何をしてるんだろう」などと心配しているかもしれない。カレンは午前中にこのツアーに参加し、私が午後の同じツアーに参加したのも知っているので、「今頃パンとチーズ、ハムにオリーブオイルをふんだんにかけた夕食を食べているかもしれないわよ」などと噂話をしているかもしれない。

帰りはバスで30~40ほど、居眠りをしている間に船に着いた。今日はビュッフェにも行かずに夕飯を抜くことにする。もうあの夕飯で十分満足だ。

部屋に戻ると、ドアの横のラックに「一昨日のジブラルタルのツアーで、天候のためにケーブルカーがキャンセルになったので20ドルを返却する」旨の手紙が入っていた。

いよいよ明日はバルセロナ。バスで市内観光をしてサグラダファミリアの中に入る。幸か不幸か塔の上には上がれないが、acrophobia (高所恐怖症)なので、まあいいとしよう。

そういえば、私はまだスカイツリーに行ったこともないし行くつもりもない。船で出会った人たちにアドレスを教え「東京に来たら案内するからね」と言ってはいるが、スカイツリーでは下で待っていることにしよう。