旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語』(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に 出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えました。いま世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆とともに、旅先ではこのブログを書いています。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

旅三昧&ときどき読書+映画

私は小泉牧夫。英語表現研究家という肩書で『世にもおもしろい英語』『アダムのリンゴ 歴史から生まれた世にもおもしろい英語」(IBCパブリッシング刊)という本を書いています。2018年4月に出版社を退職し、41年にわたる編集者生活を終えます。それからは世界中を旅しながら、本や雑誌記事の執筆をする予定。お金はありませんが、時間だけはたっぷりある贅沢な旅と執筆と読書と映画の日々を綴っていきたいと思います。

ドイツ歴史博物館とイーストサイド・ギャラリー

626日(水)、午前11時にホテルを出てドイツ歴史博物館へ向かう。ホテルのすぐ近くで路面電車に乗って10分ほど、Staatsoperという停留所に到着で降り、そこから10分、迷いながら歩いて博物館にたどり着く。ネットでは「ベルリンでは『壁』に関する施設以外は、それほど大したものはない」といった」いった情報が多かったが、この歴史博物館の展示は充実していていた。

まず2階に上がると、これまでドイツの国境がどのように変化してきたかを説明する大きなスクリーン映像があった。3分ほどだが、ヨーロッパの真ん中で国家を維持するということは、本当に大変なことなんだなと実感。

隣の小さな暗い部屋に入ると、ドイツの歴史の流れを紹介する30分ほどのVTRが流れていた。みんな一生懸命に見ている。ドイツ語のナレーション、英語の字幕付き。一番前の椅子だけが空いていたので、そこで見ていたのだが、首を左右に振りながら英文字を追ってもほんの0.5秒で消えてしまうこともあった。そこで1回目を見終わると、後ろの席に移動して2回目を見た。すると瞬間的に英語文の全体がつかめるようになった。

中世の初めにフランク王国が誕生し、3つに分かれ、それそれがフランス、イタリア、ドイツに繋がっていく。そこから始まって、神聖ローマ帝国宗教改革第一次大戦ヒットラー独裁政権から第二次大戦終了、東西冷戦時代、ベルリンの壁崩壊、東西統一ドイツ成立、EU誕生まで・・・と、瞬時も目を離せないような充実した内容だった。

この映像を見ていて思い出したことがある。ベルリンの壁が崩壊したのが1989年、その翌年に東西統一ドイツが誕生したのだが、その26年前、あの1964年の東京オリンピックには東西ドイツが統一チームで参加している。私は小学校5年生だったが、統一旗は赤・黒・黄色の三色旗で中央には五輪マークがあった。ドイツの選手が金メダルを獲ると、国家の代わりにベートーベン交響曲第9番「喜びの歌」が流れた。そんなことを実体験として記憶している人も少なくなった。

それにしても、この歴史博物館の充実ぶりはすごい。『地球の歩き方』の「ドイツ」判は持って来なかった。だから、どの博物館・美術館が行くべき価値があるところなのかが、ネット情報だけではいまいちわからない。昨日も行ってみたら拍子抜けというところがあった。日本に帰ったら『地球の歩き方 ドイツ』を買って、この博物館にどのくらいのページが裂かれているかを見てみたい。

16世紀のコーナーにマルティン・ルター肖像画があった。クラナッハの作品だ。去年か一昨年かわからないが、上野で開催された「クラナッハ展」でもこの絵を見たはずだ。全くおなじものなのだろうか?

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それぞれの時代別に絵画や宝物を見ていると、入場してから2時間が過ぎていた。でもまだ半分、1階には20世紀以降の事柄の展示がある。結局この博物館を出た時には330分を過ぎていた。

急いでイーストサイド・ギャラリーに向かう。川沿いの道に沿って壁が残っていて、そこにたくさんのウォール・ペインティングがあると言う。iPhoneで地図を見ると、博物館を出て向かいのStaatsoperというバス停から100番のバスに乗ると行けるようだ。

iPhoneの地図と私がいる場所が正確に重なった。ベンチもあったので10分座って待つ。そこに100番のバスが来た。でも素通りされてしまった。さらに15分、またバスが来たので、手を振って合図を送るが、またもや停まってくれない。なぜだろうか? ちゃんと屋根のところにStaatsoperと表示されているのに。

前方を見ると、150mほど先にバスが停車し、どうもそこで人を乗せているらしい。私がいたところには、このバス停の名前も表示されていて屋根もベンチもあるが、停留所のⒽというマークだけがない。どうもここではないらしい。

バスが停車していたところに行ってみると、そこにはⒽというマークが表示されていた。ここがバス停だったんだ。何と紛らわしいことだろう。向かいにはフンボルト大学があり、何人もの学生が道路を渡りバス停にやって来る。ところが、それまでは10分か15分間隔でやってきたバスが急に来なくなった。20分たっても30分経ってもやってこない。何人かの学生は諦めて歩き始める。待つこと40分、やっとバスが来た。

3つ先のアレキサンドル広場でバスを降り、今度は高架線のSバーンに乗ってオストバンホフという駅で降りる。少し歩くと、いろいろな絵が描かれた壁が見えてきた。数多くのウォール・ペインティングを見ながら、川沿いの道をゆっくり歩く。

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もう次の駅が近かったので、そこから鉄道でベルリン中央駅に向かう。3日後にポーランドワルシャワに行く予定にしている。本数の少ない国際特急列車なので予約を取っておきたいと思ったのだ。

3日前にプラハからこの駅についたばかりなのに、中央駅に着くとなぜか懐かしい。あの時は右も左もわからなかった。しかし、今ではこの駅が街全体の中でどこに位置しているのかもわかる。地下鉄と路面電車とバスを乗り継いでベルリンの街を自由に歩いている自分がいる。ものすごい進歩だ。

チケット・カウンターがどこにあるのかわからない。それらしきマークの表示はあるが、その矢印を辿っていっても、いつの間にかなくなってしまう。本当に不親切だ。駅構内をしばらくうろついていると、チケット売場らしい部屋があった。大勢の人が待っている。機械から整理券を取って順番を待つらしい。電光掲示板にその番号と窓口の番号が一緒に表示されるようなっている。乗車券を買うだけで、何で待たなければならないのか? 日本なら新幹線のチケットでもほんの数秒で買えるじゃないか?

20分ほど待っていると、私の整理券と窓口の番号が表示された。窓口の女性に「今日ではないんです。3日後にワルシャワに行きます。ユーレルパスを持っていますから、チケットはいりません。予約だけ今できますか?」と聞くと、「できます」と言う。「何時の列車ですか?」と聞かれたので、列車のベルリン発車とワルシャワ到着時間のメモを渡した。

クレジットカードで3ドルほどの料金を払うと、車両と座席の番号が刻印されたチケットを渡してくれる。「この席は進行方向を向いているんですか?」と聞くと「わかりません。ドイツの列車ではないので」と言う。なるほどそういうものなのか。

無事に予約も取れてひと安心。チケットルームを出ようとすると、そこに券売機があった。そうだ、明日近郊のヴィッテンベルクという村に行くんだった。この駅で切符を買って、そのまま列車に乗ればいいと思っていたが、果たしてそんな簡単なことなのだろうか? 券売機で買えるものなのか、ちょっと試してみよう。

パネルをタッチして言語を英語にして、行き先をWittenbergと入力。ところがその先がわからない。「大人」か「シニア」か「学生」か? はたまた「片道」か「往復」か? みんなドイツ語になってしまう。チケットルームのインフォメーションに女性がいたので、「券売機でチケットを買っているのだが、途中からドイツ語になってしまってわからない。『大人』『往復』をドイツ語でどう書くのか教えて欲しい」と紙とペンを差し出した。ところがその女性は「ここで整理券を取って順番に並んでください」と言う。えっ? さっき20分も待って予約券を買ったのにまた並ぶのか? 日本の東京駅ならJRの社員が券売機まで来て、懇切丁寧に教えてくれるぞ。ここで「整理券を取ってください」と言うだけの「インフォメーション」なら、人なんていらない。表示だけあればいいじゃないか!

また30分待った。今度は人の良さそうなおじさんだった。「明日Wittenbergに行きたいんです。いま往復チケットは買えますか?」と聞くと「どっちのWittenbergですか?」と聞く。そうか、同じ名前の駅が2つあるんだ。「マルチン・ルターに興味があるんです」と言うと、すぐにわかってくれた。

「時間は?」と聞かれた。「朝10時頃に行って、夕方帰って来るようにしたいんです」と言うと、1032分発、午後3時戻りのチケットを取ってくれた。帰りは「夕方」と言ったのに、いやに早い。そんなに長くこの村に滞在する人は少ないのだろう。

31ユーロ」だと言う。特急で40分、各駅で1時間半なのにずいぶん高い。何日か前にチェコの“チェスケー何とか”という駅からプラハまで列車に乗った。その長距離列車の運賃でさえ8ユーロだった。「ずいぶん高いですね」と言うと、「往復なので・・・」と申し訳なさそうに言う。チケットを差し出し、「空欄のところに名前を書いてください。ファミリーネーム、ファーストネームの順で」と言う。電車のチケットに名前を書くなんて初めてだ。何の必要があるか、さっぱり理解できない。

国際急行列車の予約をし、近郊の村までのチケットを買うだけで、すったもんだがあり、1時間以上かかってしまった。日本なら、それぞれほんの数秒で終わることだ。意味がわからない。